第30章 rollin’ rollin’
「あーもうわかんねーっ …あの穂波さんのこと、
ばって抱きしめても良いっスか?」
『へ? あ、えっと…』
同じことでも、ハグして良い?とばって抱きしめても良い?って
パンチが全然違うな。
たとえ抱きしめる縛りだとしても、
効果音が ぎゅって、とか ぐっと とかだったらまだやわいけど、
ばって。 ばっ って。 なんだか情熱的…
なんて脳内で考えてるうちに、言葉通り ばっと 抱きしめられた。
今は影山くんの腕の中だ。
影山くん、いい匂い。
これは、ハグ。 パグでもサグでもいい。
影山くんの背中に腕を回してハグを返す。
合宿お疲れさま、春高でまた会おうね、
今日はまさかの一緒に過ごせた時間楽しかったよ、ありがとう。
道中お気をつけて。
いろんな想いを込めて。
バレーの時の美しく無駄のない姿とは違い、
無骨とも形容できそうなほどに力強く
半ば無理矢理に腕の中に閉じ込められていることに、
不思議な安心感と、とてつもない愛おしさが湧いてくる。
スマートじゃないその感じに、妙に心がくすぐられる。
ちょっと、危ない。
『…ん』
なかなか腕の力が緩まないな…
「…っス」
『…ん?』
腕の力がすーっと和らぎ、身体が解放される
「もっと触りたいです。見たいです。穂波さんのこと」
『…あ………』
やだ、すごい、綺麗な目。
そんな風に近くから見下ろされて、
こんな風に半ば強引に抱きしめられて、
こんなことを計算じゃなく言われて、
それは一つだけといえど年下の男の子で、
キュンとしない人がいるだろうか
「なんすかね、これ」
『…なんでしょうかね、それは』
「…こことか」
影山くんの綺麗な… 綺麗すぎる指がわたしの唇に触れる
影山くんの顔がさらに近づいてくる
「どうなってるんすか、気になって仕方ないです」
………。