第30章 rollin’ rollin’
ー穂波sideー
「綺麗な穂波さんも好きですけど、かわいい穂波さんも好きです」
…ってちょっと
影山くんの無意識なこの手の突拍子もない発言には、
だいぶ慣れてきたつもりだけど、
これすごいなんていうか… きゅんとするやつ。
『…ありがとう。 …んと………
わたしも綺麗な影山くんも、かわいい影山くんも好きだよ』
あぁ、わけわかんなくなって変なこと言ってる。
いや事実は事実だけど、違うでしょ、っていう。
でも影山くんもそんなつもりで言ってないだろうし、まぁ大丈夫か。
「…ぅす…」
ほらやっぱり塩反応… ってちょっと!
ちょっと俯いて、口元に手の甲つけて、恥ずかしそうにしてる…
え、ちょっとほんとに…
かわいい。
食べちゃいた… くはなりません。だめだめ。 だめだめ。
不埒な考えだめ。
『影山くん、そろそろ行こっか。少し余裕あった方が安心だし』
「あ、そうっすね」
『影山くんの好きな食べ物は、ポークカレー温玉のせ、だよね?』
立ち上がって、ゴミを捨てに歩きながら話す。
「はい。なんでも好きですけど」
『ポークカレー温玉のせってさ、なんかCMっぽいよね』
「…?」
『温玉をのせたカレーでも、ポークカレーでもチキンカレーでもなく。
ポークカレー温玉のせ、って言い方とやっぱポーク指定なとこが、CMっぽい』
「…そっすか ちょっとよくわかんないっス」
『うん、テキトーに流しておいて。 …カレーパンも好き?』
「あ、はい。 すげー好きです」
『ふむふむ』
「なんすか?」
『ううん、ちょっとしたリサーチ』
「……あの、穂波さん」
『はい』
改札前で改めて名前を呼ばれる。
「…パグ?」
『パグ?』
「いや、ちげーな… サグ?」
『…サグ? サグカレーわたし好き』
「なんすかサグカレーって」
『…また作るね』
「ぅす! …で、えっと…」
パグ… サグ…
…笑
…ハグ?