第30章 rollin’ rollin’
…あれ?わたし倒れるの阻止、成功したよね…?
突然のこの状況にわけがわからなくなる。
『…』
そーっと顔を上にして、目線を影山くんの顔に向ける。
後頭部は抑えられたままなので、顎とかはまだ影山くんにくっついたまま。
「…すいません、なんか咄嗟に」
『ほぅ…』
「今ならいけんじゃないかなって」
『ほぉ…』
…いまいちよくわからないけど、何かに挑戦して成功したのかな。
「場所、変わります」
角にいた影山くんがくるりと位置を変わってくれる。
あと10分くらいで着くと思うんだけど…
「孤爪さんに、触ってて気持ちいいはもうやめてって言われましたけど…
触るなとは言われてないですよね」
『…あ、はぁ…』
手首は依然掴まれたまま
後頭部にあった手はわたしの横の壁につけて
まるでこれは壁ドンをされてるみたい。
どきどき
他のこと考えよう
『…あ、えっとね、友達の仕事?の見学してたの。
それで、今から丸の内に行ってみようかなぁなんて思ってた』
「…丸の内?」
『あ、東京駅周辺』
「あ、そうなんすね」
『…新幹線の時間は?これから買うの?』
「いえ、もう予約してあります」
『そっか。 お腹は空いてる?』
「…はい、めちゃくちゃ空いてます」
『…笑 わたしもちょっと空いてる。
時間あれば、改札の近くのとこでお弁当か何か買って食べない?
あ、駅弁とか食べたいのかな』
「いえ、穂波さんといたいです」
…んーと、それはわたしのした質問の答え、になってるのかな?
『…うん。じゃあ、そうしよ。確か飲食スペースがあるはず』
「ぅす」
東京駅に着くと影山くんはわたしの手を握って歩き出した。
んーと… えーっと…
『影山くん』
「…なんすか?」
『そっちじゃないよ、あっち。新幹線のほう』
「…あ、すんません」
『…ふ 笑 かわいい』
「…? なんすか?」
『ううん、なんでもない』
最近わたしの周りにいるというか、やりとりのある男の子はスマートな人が多くて。
研磨くんはもちろん、京治くん、蛍くん、白布くん…
こんな風なのってあんまりないから、きゅんとした。
影山くんにはそんなつもりなくってもさ。