第30章 rollin’ rollin’
それから、
──昨日、木曜日。
お風呂から上がって、
ストーブの前で本を読んでいると、
「穂波〜 電話鳴ってる」
キッチンのカウンターに置きっぱなしになってた電話をお母さんが持ってきてくれた。
『ありがとう』
白布くんから。
わわ。
初めて電話する。
白布くんとはあれからちょろちょろってメールでやりとりをしてる。
『…もしもし』
「あ、穂波。今大丈夫?」
『…うん、大丈夫だよ』
「…なんでそんな恥ずかしそうな感じ出してるの。わざとやってんの?」
『へっ なんでわざと恥ずかしがらなきゃいけないの』
「…いや穂波がそんなことするわけないのはわかってんだけど」
『………』
「っていうかその前にできねーだろ」
『…う。 事実を言われてるだけなのに、別に気にもしてないことなのに、
なぜか刺さるのは白布くんのそのドライな感じによる副作用かしら』
「は? お前なにわけわかんねーこと言ってんの」
『…なんでもない。気にしないで』
「…元気してる?」
『うん、元気だよ。白布くんはいかがお過ごしですか?』
「…俺もまぁ、元気。やっぱ声聞くのいいな」
『…ほんとだね、メールよりこっちのが好きだな』
「…じゃあ、電話増やしてもいいわけ?」
『…あぁ、タイミングが合うなら電話の方がわたしはすきだけど。
でもそんなわたしと話すことある?』
「…お前、俺の気持ち忘れたの?」
『あっ ごめん。 ううん、忘れてないよ。忘れてないんだけど…』
「けど、何?」
『…思い出すとどきどきしちゃうから、気にしないようにしてる』
「………」
『………』
「いや、どきどきしろよ」
『うぅ… 白布くんのその感じゾクゾクするんだもん。
そんな人に想ってもらってるなんて、
しかも小さな頃からって思うと、しゅるしゅるーって』
「…は?」
『しゅるしゅるーって飛んでいってしまいそう』
「…は? 意味がわからない」
『いいよ、わからなくて』
「…しゅるしゅるーって飛んでく? …風船?」
『そう、風船しばる前に手から離れちゃって空気が抜けてしゅるしゅるーって』
「…笑 何これ何の話だよ」
『…ふふ だから気にしないでいいの』