第30章 rollin’ rollin’
ー赤葦sideー
12月最初の火曜、
部活を終えて家に帰ると俺宛の手紙があった。
葉書ではなく、封筒で届いたのは初めてだ。
送り主を見なくても、もう、字でわかる。
中には2枚葉書が入っていた。
一枚は普通に手紙として。
もう一枚には穂波ちゃんの住所が既に書いてあって、
切手も貼ってあり返信用になっていた。
葉書が入っていた封筒にも穂波ちゃんの住所が書いてある。
今まで海外からの葉書だったので住所が記されておらず、
返事をすることができなかった。
かと言って、俺の方から穂波ちゃんに住所を尋ねるのも憚られて、
聞けずにいたので返事ができることが嬉しい。
【京治くん。 こんにちは! そして17歳のお誕生日おめでとう!
ちょうど、明日くらいかな? 文化祭で会えたの、嬉しかったです。
あれから1週間のうちにまたぐっと寒さが増したね。
今日、〇〇さんから連絡があって、
12月16日の日曜日の夕飯、よければ一緒にどうですか?
次の日も朝練があるだろうし、春高前の大事な時間なので京治くん無理なく。
〇〇さんが会いたがっているので、機会はまたいくらでもあるはずです。
もし来れるなら、それもそれでとっても嬉しいです。
場所は時間は、京治くんのご都合を聞いてから決めるとのことです。
もし、来れる場合、部活が終わる大体の時間(光太郎くんの自主練があるのかな)を教えてください。
あぁ、いろいろお話ししたくなるけど住所欄を使っても足りない!
わたしは今千葉にいて、海を見ながらこれを書いています。
いそがしい日々は続くと思いますが、どうぞご自愛を!
2012.12.2 穂波】
日曜日に書かれたもののようだ。
…16日。
どうにかして木兎さんの自主練を断れば、
いつもより部活後の時間は格段に多く取ることができる。
普段遅くまで自主練をして帰っているので、
夕飯を食べるくらいのことが、
翌日の部活に支障をきたすことはまずない。
…それに何より、この誘いは魅力的だ。
好きな人との食事、
それに加えての作家の方に会えること。
返信用の葉書を前にペンを取る。