第30章 rollin’ rollin’
カズ「いや単純に、穂波は別に撮影じゃないなって。
おれがいるから、とかおれが教えてくれてるから、って感じでもないじゃん。
楽しいから、気持ち良いから、やってる。でも自分本位じゃない。 …穂波好き」
ツトム「あれあれ?これなんの話?笑」
周平「転けてもトライとかさ、おれらにとっては普通だわな。
じゃないと今がないし、くらいのベース。じゃないとそもそも続けてないし。
バレー部にとってはなんだろな、太ももはち切れそうでも全力で飛ぶとか?
一歩でも半歩でも速く足を出すとか? どんなに疲れてても丁寧にレシーブするとか?
…全然わかんねーけど、そういうことやってんのかね」
「太ももはち切れそうでもちゃんと飛ぶのも、疲れてても半歩でも速くボールに近づくのとか…
おれはできない。 おれには使えないやつ」
周平「…できないんだ 笑 言い切った」
カズ「使えないって?」
周平「根性のことだろ 研磨の中では使う使わないのものっぽいな」
ツトム「使える使えない…っぽいけど?」
カズ「…なにそれ、技ってこと?」
「…技」
技、か。
ツトム「…その当たり前のことを当たり前にできるようになるまでに、
何か必要なことがあるんじゃないの?」
「………」
ツトム「君たち自分のことはあまりピンと来なそうだから穂波ちゃんで話すけども。
フラダンスって相当脚と腰をさ、使うじゃん。それはまぁ、視覚的にも分かりやすいけど、
加えて腕をさ、こうやって垂直にしとくのって地味に結構きつい」
「………」
ツトム「どっちが先に来るかは人それぞれだろうけど、
心折れて身体作ることがしんどくなる場合もあるだろうし
身体がしんどくて心折れる場合もあるだろうし」
「………」
ツトム「すげータフな振り付けとか追い込みとかを楽しめるのは、
その前の段階があるからなのかね、とか。
ごめんやっぱ研磨くんのためにロジカルに説明するのは、俺には無理かも」
「おれのため?」
ツトム「ぼんやりしたこと言っても納得してくれなそうだし。
そもそもぼんやりしたものを解読しようとしてんでしょ」
「………」