第29章 山茶花
ー古森sideー
「じゃあ、俺ちょっとあの辺行ってくるわ」
穂波ちゃんの歌を聞いて、
そのあとはDJだってことで流石に聖臣も帰るかなーって思ったんだけど。
後ろの方で待ってるから元也がいたいならいればいいって言われて。
そりゃこんな機会滅多にないし、
じゃあ面白そうだからいようかな〜って。
高校生の分際でこんなクラブっぽいところになんの後ろめたさもなくいられるってすげー。
クラブとか完全にイメージでしかないくらい遠いとこで生活してるから。
…で、ウケるのが、聖臣にすごい場慣れ感があること。
背の高さとか、天パの髪型とか姿勢とか、体型とか、…極め付けはマスク。
あと服が上下とも黒いのも。
ただいつも通りの聖臣なのに、
本人にはこれっぽっちもそんなつもりもないのに、
すげーそれっぽく見えてきてツボる。
そんな聖臣を置いて人混みの中に入って行ってみる。
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うん。健全だ。
音とか演出はすごいレベル高いけど、
結局ここにいるのはほとんどが普通の高校生で。
当たり前だけど酒も飲んでないし、ヤバそうな人もいない。
飛んだり跳ねたり声出したりはしてるけど、全然セーフ。健全。
ただちょっと、エロいなって思うのが、
普通に喋っても声が聞こえないから、
性別関係なく話す時に距離が近くなってる人が多いこと。
…なーんて、知ってる子がいるわけでもないし、
人間観察と社会勉強みたいな、そんな感じの事だけして聖臣のとこに戻る。
…って、聖臣!
なんかいやらしいぞお前今日!
ズボンのポッケに手を突っ込んだまま腰をかがめて
女の子の耳元でなんか喋ってる。
話が終わると一旦、お互いに目をみわせてなんか女の子が言う。
え?みたいな感じで聖臣が耳を傾ける動作をすると
次は女の子が聖臣の胸に手を添えながら背伸びして、
それに合わせて聖臣はまた腰を屈める。
女の子は、聖臣の耳元でなにか喋る。
なんだよもー、こいつの謎のこなれ感。
力の抜け具合がそうさせるのかな。
もちろん話してる女の子っていうのは、穂波ちゃんなんだけど。