第29章 山茶花
「まぁ俺が心配しよーがしなかろーが
全部うまくいってんだけどな、あいつらは」
「…あんなこと別に俺が言わなくたって
あと今朝の女子みたいなのがいくらいたって
多分2人は変わんないっすよね。
でもなんつーか、あの2人マジで理想的すぎません?」
「あーキミ。それ危ない」
「ん?危ない?」
「あの2人を理想に掲げると、全然彼女できなくなるから」
「…あー…マジか あー…確かに言ってる意味は想像つくっす」
「だからあれだな、まぁ、あくまでも目標っつーか、イメージっつーか。
そのくらいに収めとけよ。俺もマジでそうしよ。彼女できないったらない」
「そーっすよね!黒尾さん、すげーモテるのに!」
「モテなくていいから、研磨みたいな出会いをくださいっつって。笑
穂波ちゃんみたいな人に出会いたいです。って。サンタさんに手紙でも書こうかな〜笑」
「…やばいっすね、それ。俺はモテるならそれはそれで嬉しいなー」
研磨はこの頃こういう
素直ないい子に好かれる傾向があるのかね。
犬岡、チビちゃん、穂波ちゃん…
リエーフもいれとくか。
そのうち金稼ぐようになったら
いい部下に恵まれるんじゃねーかな、とか…
部下って柄じゃねーか… 良いスタッフ?わかんねーけど…
「…ところでその、2人はどこ行ったか知ってる?」
「いや、フロア…すぐそこで、すっげー熱いちゅーしてから
研磨さんが手を引いて穂波さんのこと連れて行きました。
まじでズルくないっすか? 考えれば考えるほど、研磨さん、ズルいっす」
「ズルい、とな」
「一つ一つの破壊力が半端ない。
話してて一瞬目を見てもらえた時のあの高揚感とか…」
「なるほど… あんまそこ気にしたことなかったな… そんな風にあいつ見られてんだな」
「そーっすね、少なくとも俺は、はい」
「へぇ」
「…ズルい。やりたくてもできないやつですよ、あれ」
「…まぁ、その分あいつなりに苦労してきたからな。
ま、本人のやる気のなさが前提にあるから、別に大した苦労じゃねーけど…」
「あーそうっすよね。ほんとなんか、2人の話だけで何曲か作れそう」
「あ、あいつら体育倉庫から出てきたぞ」
「うわ、マジか。そーゆーことかー」
いやマジで研磨、そういうことなわけ?