第5章 夏
ー穂波sideー
夏祭りは商店街の途中神社へと続く道があるのだけど、
そこから神社まで続いてる。
毎年来ているお祭りに、今年は研磨くんと来れるなんて…
「穂波、腕組まない?」
研磨くんのふいうちは、いつも胸にくる。どきっとする。
『…へ?』
「…いや、手繋いでるだけだと、なんか。財布とか出すときに離しちゃうし…
組んでたら財布もそのままだせるかな、って」
『…あ、うん。ありがとう』
自分で無意識に組んじゃうのは平気だけど、
組もうって言われると、途端に恥ずかしくなる。
研磨くんが開けてくれた腕と身体の隙間に、自分の腕を潜らせる。
「…ん。行こう?」
『…うん、行こ……』
・
・
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りんご飴とたこ焼きを買って、石段に座る。
研磨くんはちびちびとりんご飴を齧っていて
その姿は、かわいい、以外に形容できる言葉が見つからない…
『ねぇ、研磨くん。美味しい?』
「…ん」
口元に飴のカケラがついてる…
…ペロッ
最近いつも研磨くんからふいうちのキスをされてたからお返しダ。
「………」
『…ふふっ。飴がついてた。美味しいね』
「……ん」
『わたしも食べよっと』
6個入りのたこ焼きを買って、
研磨くんが2つ、わたしが四つ食べた。
研磨くんの手にはまだりんご飴が3分の2くらい残ってる。
「…ねぇ、穂波。美味しかった?」
『うん、美味しかった』
研磨くんの方を振り向くと、
…ペロッ
研磨くんが口元を舐めてきた。
「…ソース、ついてた」
『…ふふっ』
それからしばらく目が合って…
どちらからともなく一度だけ、深く長いキスをした。
ゆっくりと唇を離す…
この瞬間がすごくすき…
「…たこ焼きとりんご飴の味がする」
『…ふふっ。ほんとだね』
これからまた夏祭りに一緒に何度も来れるかな…
その度、研磨くんはりんご飴を、わたしはたこ焼きを食べるのかな…って思って
ひとりでニヤニヤしてしまった。
「…穂波?」
『…ううん、何でもないよ、研磨くん。また夏祭り来ようね』
「…ん」