第5章 夏
手を繋いで夏祭りのとこまで歩く。
家の中でも歩幅が制限されるのか、
いつもよりちまちまと歩いていて、
今はたすきも取っているので一層おしとやかに映る。
普段からも所作が綺麗なんだけど、そこになんだろ。
和装することでなにかが加わったのか、制御されたのかで、はんなりとして、色っぽい。
下駄のカラコロする音がまた、かわいらしい。
「穂波浴衣慣れてるの?」
『えぇ?そう見えた?研磨くんすごいね』
「…ん、なんとなくだけど」
『遊児が言ってた、茶道とお琴の師範をおじいちゃんとおばあちゃんがやってるのは本当。
家元じゃあないけどね。笑
宮城に行くと、小さい頃からお着物着て、お稽古つけてもらってるの。
ああ見えて、遊児もお茶点てれるんだよ』
「…へぇ」
『遊児は着付けもわたしよりずっと上手で、手先が器用なんだよね』
遊児「穂波!今俺のこと話してた?」
夏祭りに行ってきたのか、ヨーヨーを持った遊児がいた。
『うん、宮城のおばあちゃんの家の話。遊児の隠れた特技の話』
研磨「…お茶点てれるの、すごいね」
遊児「ぬぉっ!喋った。…お、おぅ。半ば強制だったからな〜 今から夏祭りデート?いいなぁ」
『ヨーヨー、3つもとったんだね』
遊児「飯はBBQで食べたし、帰ってもまだあるだろうし、射的とヨーヨー釣りした
ヨーヨー穂波に1つやるべ」
『…ふふ、ありがと、遊児。射的はどうだった?』
遊児「二等当てた!俺の前にやって俺がやるの見てた小学生に景品やった」
『…ん。遊児らしい。…じゃあ、行くね?あとで遊ぼうね?』
遊児「おぅ、じゃあなー研磨ー!穂波の手、離すなよ〜』
ひらひらと手を振って、遊児は去っていった。
『研磨くんは何か食べたいの、ある?』
「…りんご飴」
『…ふふ。りんご好きなんだね。そろそろ美味しいりんごが出回る季節だねぇ』
「…穂波は?何か食べたい?」
『…たこ焼き』
「………」
『…なんでなにも言わないの〜笑』
「…たこ焼き好きなんだね」
『…うん、なんか屋台とか海の家とか。無性に食べたくなる』
「…ん。じゃあ、たこ焼きとりんご飴」
『…ん』