第1章 出会い
ー穂波sideー
四限が生物室であったから
研磨くんを誘ってみた。
嫌だったら嫌、ってはっきり言うか顔に出そうだから、
気兼ねなく誘っちゃってるけど、どうかなぁ。
「…うん。いこ」
よかった。
『研磨くんは、ゲームが好きなんだね?』
「…うん、まぁ。暇つぶしでしてるときもあるけど。
クリアできなそうって思うのも、慣れてきてクリアできるのが、楽しい」
『へぇ、わたしあんまりやったことなくって。
従兄弟とマリオカートくらい。でも、マリオカートには楽しかった思い出しかない!
研磨くんがしてるゲーム、今度横で覗いてみてもいい?』
「…え、それは…いいけど。…穂波さんはそれ楽しいの?」
『うーん、わかんないけど、きっと楽しい。
小さい頃から、慣れた手つきでこなすのをみるのが大好きなの。
ぞくぞくぞくぅって、なる。ふわぁ、って気持ちよくなる。笑
メイクをしてる手つきとか、大工さんが釘を打つ動きとか、
サーフボードにワックス塗ってるのとか。
もう、ジャンル問わずなんでも!笑
それに、ゲーム覗いて楽しくなくても、研磨くんの横にいれたらそれだけできっと楽しい。
いや、絶対!笑』
「………」
生物室についた。
ここでの授業は席、関係ないから一緒に来た研磨くんと座る。
実験とかするわけじゃないんだけど、この先生の授業はだいたい生物室である。
また、一緒に来たいな。
授業が終わって、教室まで一緒に帰る。
小一時間、研磨くんのずっとそばにいる。
こんなに長い時間一緒にいるの、初めて!
「…フラダンスはどこかで習ってるの?」
『うん!基本週に三回行ってる!
違うスタジオで、違う先生。
他のダンスもやってみたりするんだけど、いまはフラだけ』
「…へぇ」
『現代フラ、古典フラ。
あとごめん 笑 フラじゃない、タヒチアン』
「…へぇ」
『…ふふ。またショーがあるとき、声かけてもいい?
見に来てくれたら、それは、それは嬉しい!』
「…うん。…声かけて。」
素直にずけずけと話しちゃってるけど、
研磨くん、それでも嫌な顔しないで、聞いてくれてる。
…ようにみえる。
優しいな。あったかいな。
無理なリアクションや、穴埋めみたいな会話がないのが心地良い。
猫がそばにいることを認めてくれたみたいな。