第1章 出会い
部室の扉を開けると、
山本くんがすごい形相でやってきた。
でも、彼なりに周りからの目に気を使ってくれたのか、
いつもの大声じゃなくって扉の外に連れてかれて、
「孤爪!きょう、きょう!女子と一緒に廊下歩いていただろ!」
「へぇ?あのかわいこちゃん?」
「黒尾さんも知ってんすか!?孤爪、なんだよあれ?」
「…山本くん、うるさい。…あれって言われても。…なんだよっていわれても。」
「なになに?いつ一緒に廊下歩いてたって?」
「…っ今日!…今日、四限の前に生物の教科書もって、一緒に廊下歩いてたんすよ。
帰りは一緒じゃないだろうと思ってみてたら帰りも一緒に歩いてたんすよ…
絶対今日部活前に聞いてやると思ってたら、朝練のあとも廊下一緒に歩いてたって福永が言うんすよ…!
誰なんだ!付き合ってるのか!やる気なしおのお前と女子がぁぁぁ」
「へぇ。まぁ、山本、それはおいおい聞いてこうぜ?
とりあえずその鬱憤は練習で晴らしてこい。
準備すっぞー」
…山本クン、うるさいなぁ。
小さな頃から目立つのは苦手だ。
でも、朝も四限の移動も、周りのことなんて何一つ気にならなかった。
それに今も。みられてたって聞いても、そっか。ってただそれだけ。
なんだろ、これ。変なの。
…うるさく問い詰められるのは嫌だけど。