第29章 山茶花
「絞めませんよー!」
クロさんがどこかから叫ぶ
「うわっ黒尾先輩っ すいませんっ!」
「いやだから、絞めないっつってんじゃん…なんで謝んの…」
『あははっ…』
「いやでも、ほんと、例えば穂波さんがゲーマーでも、研磨さんがサーファーでも、
きっと2人は出会って同じようにこうしてるんじゃないかなぁって思うんだよね。
こうだからこうなったんじゃなくて、2人だからこうなってるんだなっつって」
『………』
何で彼はこんなに嬉しいことを普通〜に言ってくれるんだろう。
「まぁ、この辺にしときます。
伝えきれない想いは詩にします。曲にします。
…てなわけで、そろそろ演奏再開しますかね。
…穂波さん声でそう?笑」
『…笑 あー あー』
「なんなんそれ、マイクチェック?笑」
『いやもうほんと、そういうこなれた事何もできないから振らないで…笑』
ちゃあんと和んだ空気にしてくれてから、
流れるように演奏が始まる。
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2曲歌い終えて、袖にはける。
捌けるときにマイクを通さずに、まだ近くにいてねって言われた。
体育館にいればいいかな、と思って研磨くんに電話をかける。
「もしもし」
『あ、研磨くん。どこにいる?』
「ギャラリー」
『今行く、そこにいてね』
「…ん」
駆け足で研磨くんの元へ向かう。
照明の人がいて、入っちゃいけないスペースもあるギャラリー。
研磨くんのほかに生徒は4人いて、
みんな屋上とかでたまに会うカップル。
人混みを避ける人たち。
特に会話もしないけど、ちょっとした親近感がある人たち。
「穂波、おつかれ」
『…ん!気持ちよかったぁ』
「…ん」
研磨くんはわたしのことを後ろから抱きしめるみたいにする
「…部活やだな」
『…ふふ』
「このまま一緒にいたい」
『………』
「…やっぱさっき我慢するんじゃなかった」
『…ふふ』
「…すき」
『…ん』
たまらん。
なんじゃこりゃ…