第29章 山茶花
「…でも、おれしか見ないとこもあるし」
『…ん』
「…まぁいいや、そんなこと」
話を投げ出して、研磨くんはまた深く口付ける。
指先で耳元を優しく撫でながら、
腰をふわーっとなぞるように指が這う
「キスだけじゃ、済まないや」
耳元で研磨くんが囁いて、
そのまま首筋に唇が触れる
ガタンッ
『………』
「………」
『…はっ!』
「あいすみません!ごめんなさい!邪魔をするつもりはなかったんです!でもっ」
写真部の女の子が居たんだった…
「ぅわ…」
「ああああああ!ごめんなさい!そんなっつもりじゃ…」
研磨くんは片手を額に当てて、
やってしまった…というような空気を出していて…
写真部の子は、研磨くんを怒らせたと思って慌てている
「いや、違う。 ごめん、おれ、完全に忘れてた。
こういうの無理やりみせるのとか、犯罪… ほんと、ごめん」
「いっいえ!そんな全然!むしろ見ていいのなら見させてもらいたいくらいで!!!」
『…笑』
「あっ いえっ すみません何でもありません!これで失礼します!」
『あっ ちょっと待って』
逃げるようにドアへと向かうのを引き止める
『えっと、わたし最後から2番目のバンドにもちょっとだけ参加するの
だからその前後とか、音出しとか… もし時間が合えば、そして、興味があれば遠慮なく』
「あっ ありがとうございます! ではまた後ほど! ごゆっくり!!」
慌てているわりに、ドアをそっと閉めて出ていった。
「…ごゆっくり」
『…ふふ ごゆっくり、されていきますか?』
「…ちょっと我慢、しようかな」
『…我慢しちゃうの?』
「…誘わないで、おれちょっと今日、ずっと我慢してるから」
『…誘ってきたのは研磨くんなのに、なぁ』
「………」
『………』
「…本当に誰も来ない?」
『…はずだけど、わかんない』
「…鍵閉めていいの?」
『閉めてよかったらなにするの?』
「…なにそれ、おれのこと煽ってる?」
『うん、煽ってる。 研磨くんに求められたい』
「………」