第29章 山茶花
「…この後は、どんな? 歌も歌うって、さっき昨日の子に聞いた」
『あ、うん。そうなの。 …研磨くん、帰っちゃう?』
「帰らないよ。 ていうか、おれら今日も部活」
『あ、そっか』
「穂波の歌、聞いてく」
『…うん、それでね、端の方でいいの。
端の方でいいから、最後のDJのをね、一緒に過ごしたいなって思ってるの』
研磨くんとクラブっぽい環境に存在するって、
今日を逃したら一生ない気がする。
爆音で、みんなが思い思いに身体を揺らして…
研磨くんはそこにいてくれればいい、
ちょっとでいい、から… 一緒にいたい
そして、そこでキスしたい。
そんなただの身勝手な理由。
「…DJ。 ちょっとよくわかんないけど、途中でリタイアするかも。
それでもよければ、いいよ」
『うん』
「おれと何するの」
『ただ研磨くんといたいだけ』
「………」
『あと、キスするの』
「…ふーん」
『…じゃあ、私着替えるね。
バンドの音出しまでまだ時間あるから、どっかでごろごろしよ』
「…ここは? この後誰か来るの」
『…ん?ここは、まだ先かな。
最後のDJと一緒にライブペイントする子が女の子だから、それまでは来ないかな』
「じゃあ、ここでいい。 しよ」
『へっ?』
「キス、しよ」
研磨くんがじりじりと距離を詰めてきて、壁に追いやられる。
研磨くんは片手を壁にどんってして、
それから肘を曲げながら顔の距離がどんどんと縮まる。
ふわっと唇が重なる。
それから優しく啄むように、
顔の角度を変えながら何度も、何度もキスを交わす。
パーカーのジップがジーッと下げられる
下は、ナイキのスポーツブラ一枚。
「あ、こういうのなんだ」
『うん、ひょんなことから見えても大丈夫でしょ』
「…ふ ひょんなこと」
『うん、ひょんなこと』
「…ここのホクロとかさ」
研磨くんは胸元の黒子にちゅっとキスを落とす。
「あとこっち」
身体を曲げて脇腹の黒子をペロって舐める
『…ン………』
「できたら見られたくないけどね、でもしょうがないよね」
『………』
「海でのびのびする穂波がすき。踊ってる穂波がすき。そのままがすき」