第29章 山茶花
ー穂波sideー
久しぶりにお化粧をする。
いつもは眉毛とまつ毛だけだけど…
あれもこれも駆使してステージ仕様に。
緊張はしないけど…
ちょっとハイになってるというか、
リハの時点で分かってはいたけど、
演者さんや裏方さんのレベルが本当に高くって興奮が収まらない。
その波に乗っかって、
気持ちよく踊ろう。
みてくれるみんなに何か、明るい方へ向く何かを、少しでも感じてもらえたら嬉しい。
最初の衣装はアラジンのジャスミンみたいな感じの。
エジプトのイシスという神様の羽から名付けられたイシスウイングっていう小道具を使って踊る。
オリエンタルダンスのクラスでやった振り付けだけど、
コンテンポラリーに限りなく近くって、
衣装はその時に使ったものがすごく好きだったからそのまま。
フラでもオリエンタルでも、
コテコテなステージ衣装は好みじゃないのでわたしなりにマイルドなやつ。
ラベンダー色の衣装上下に、
フェアリーな素材でできた淡く紫がかったイシスウイング。
振り付けの世界観は、
お腹にいるころの記憶〜出てきてからの感じ。
フェアリーで、ファンタジックな世界観。
叙情的で幻想的。
きっと、今日ちらほらと来ている小さな子にも年配の方にも、
楽しんでもらえると、思う。
…今日これはきっと、わたしにとって、新しい扉となる。
開けてその先にはきっと、いつもと変わらない愛おしい世界が、
より一層深く広く広がってるんだと、思う。
…きゃー!楽しみ!
実行委員の人に呼ばれたので、
着替えの衣装と水筒をもってステージ袖に移動する。
途中、ノブくんに遭遇した。
「すっげー綺麗!やばい、今日一緒に踊ってもう諦めようって思ってたけど、やっぱ無理かも!」
そんなことをからっといやらしさなく言ってくれた。
ステージの魔法。
ダンスの魔法。
すこしでもばら撒けるといい…
幕が上がる。