第29章 山茶花
ー赤葦sideー
落語が終わると穂波ちゃんは孤爪を残して
一人どこかへ行ってしまった。
腹が減ったので、各クラスの店に何か買いに行く。
孤爪たちは残って場所取りのようなことをするらしい。
…たしかに午前中のステージはどれもレベルが高く、
というかそもそもの演出やステージ裏の仕事のクオリティが高く、見応えがあったけれど…
場所取りなんてわざわざするんだな…
犬岡「やっべー俺すげー楽しみっす!
俺が言ったから考えたって言ってくれたんすよ穂波さん!」
クロ「君が何を言ったから何を考えてくれたんデスカ?」
犬岡「文化祭のステージにでないんすかって言ったから、
それで出てみようかなってエントリーしたって」
クロ「よくできました。 いやぁ〜ほんと楽しみだねぇ♡ 臍どころか谷間も見えるかも」
犬岡「くっ黒尾さん! 俺はそんなこと思ってないですから!」
木兎「…えー、なに?お臍?谷間?」
焼きそばを買いに行って戻ってきた木兎さんが会話に入り込む。
…臍どころか谷間?
赤葦「…ブフォッ ゲホッ………」
…あらぬことを想像してむせてしまった
海「穂波ちゃん、この後午後一発目のステージに立つんだよ」
木兎「まーじーでー!!なになに、ダンス?ダンス?」
海「うん、そうだよ」
木兎「えっ、それで、臍っ?谷間っ? まじかーやっべーアガる」
クロ「健全な男子校生だもんねー俺ら、別に悪い想像じゃないよねー、ね?赤葦くん」
赤葦「…ゲホッ ちょっと黒尾さん、いきなりそんな…」
明らかに遊ばれた。
…悪い想像じゃないのか?
いやでも勝手にそんな、想像するとか…
しないでいようと努めれば努めるほど、想像が膨らんでしまう。
…だめだだめだ、他のことを考えよう
赤葦「…それで、前の席でそのまま見たいってことになったんですね」
夜久「そーそー。せっかくだしな!
俺一回後ろからだけど穂波ちゃんの踊り見たことあるんだけどさ、
すっげー引き込まれたんだよな。 だから今日も楽しみ!」
夜久さんがにっこりと笑いながら言う。
黒尾さんや木兎さんとは違う意味の、
心からの楽しみという言葉に妙に安心感を覚えた。