第29章 山茶花
ー研磨sideー
手品はすごかった。
ありきたりなやつじゃなくって、
見たこともないことをいっぱいしていた。
…音駒の文化祭のレベルが高いのか、
さっきの手品の一年のレベルが高いのかはまだよくわかんなかったけど。
でも、漫才もコントもおもしろい。
演出とか音響がしょぼくないから、
余計に引き立つ。
…文化祭が有名になる理由はここか。
演者のレベルだけじゃなくて、
環境を整える方のレベルとか意識とか、そういうの。
…へぇ、結構面白い。
このセットで穂波が踊るのとか、ちょっといいかも。
おれこの場所から離れたくないな。
ステージのまん前。ここで、穂波が踊るの見たい。
…昼休憩挟むから、無理かな。
穂波のことを後ろから抱きしめてる、ずっと。
穂波はそのことについて何も言わず、何も聞かず、
いつものように俺の中に収まってる。
…かわいいし 安心するし いい匂いだし 柔らかいし あったかいし
油断するとセーラーの裾から手を入れそうになる
スカートの裾とか。 それはさすがにちょっとまずいから、制御する。
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『…ひゃあ……… すっごかったねぇ… ファンになっちゃった』
午前の部の最後の演目の落語が終わった。
いや、すごかった。
何?音駒の文化祭ってなんなの?
有名って、これ、発掘するためにスカウトの人とかきてるレベル?
猫又先生がいて、クロがいて…
それだけの理由で来て、バレー部と穂波以外関わりもなくて全然知らなかった。
野崎詣りっていう演目で、それもわかりやすくて小気味良くて面白かったけど。
その前の小咄も相当面白かった。
穂波がファンになったって言う気持ちもわかる。
「穂波、研磨」
いつに間にかカズマと周平がいる。
『あ、カズくん!周平〜 やっほー 2人で来たの?』
「いや、カズマはおっちゃんと来たみたいだけど、後ろにいるわ。
俺も友達と来たけど、なんかナンパ成功してどっか行っちゃって」
…ナンパ 文化祭でナンパとかするんだ