第29章 山茶花
穂波は着替えを控室に置きに行って、
おれは部室に荷物を置きに行く。
…部室の前にまた女子がいる。
クロは意外と硬派というか、別にふらふらと関係を持つわけじゃない。
なんていうか、それまでは軟派だけど、あるとこから硬派っていうか。
…まぁいいや。クロのことは。
「孤爪先輩っ…」
「 ! 」
「あっ あの…」
「………」
「………」
「…あ、クロ? …すぐ出てくると思うから」
「いっ いえ… あの…私っ 私、孤爪先輩のことが好きです!
えっと、付き合ってください!」
「………」
え、だれ。
なんで、おれ?
「…んと おれ彼女いる」
「知ってます!でも、彼女がいるから付き合えないんですか?
彼女がいなかったら私にも可能性あるってことですか?
正直、私の方が孤爪先輩と合ってると思います!私もこのゲーム好きで…」
「………」
彼氏がいるからってお断りする理由にはならない
って穂波、去年の文化祭で言ってたな。こういうことか。
…確かに理由になってないし、今みたいに切り返されると面倒だな。
「だからっ 彼女さんとお別れしてください!
私後悔させません!孤爪先輩のことメロメロにさせてみせます!」
…んーちょっとよくわかんないな。 …それに、声が耳についてうるさい。
なんで好きになる前に付き合ってそれからメロメロにさせるっていう流れなんだろう。
…おれには理解不能。
「んーと… 彼女と別れたとしても、無理」
「なんでですか!?」
「…別れても好きなのは穂波だし。 ていうか、別れないし」
「だから、それを私なら忘れさせれます!」
「…ごめん、無理。 好きじゃないし、好きになれない」
「…だから、それをっ」
「はぁ… ごめん、無理。 これ以上言うことないから」
耳がキンキンする。
意味わかんないし。
部室の扉を開けると、
クロの他にもリエーフ以外みんないて。
すごい、不自然に散らばってる。
「すげー押されてたな」
こういうとき意味わかんない均衡を崩すのが夜久くんだ。
おれはそれが結構すき。
「あれって普通?普通の告白ってあんななの?」