第29章 山茶花
控室やリハーサル室の使い方まで、
明日の流れ通りにした通しリハが始まった。
手品、漫才、ダンス、バンド、弾き語り。
落語、DJとライブペイント。
こんなにも多種多様なステージ芸?を持ってる生徒達が
この音駒にいたんだなぁ!って驚く。
去年は2日目すぐ帰ったからなぁ。
…それもいい思い出で、思い出すだけできゅんとするのだけど。
さすが有名になるだけあって、演出もすごい、凝ってるなとしみじみ。
音もいいし。 リハでもちゃあんと一本糸が張ったような感じ。
緊張感があっていい。
一年生のバンドはわたしやノブくんより後の出番で。
流れ的には、漫才や手品から始まって、弾き語り、バンド、
女の子グループの華やかなダンス、
落語で一旦まったりして昼休憩。
昼休憩のあと、一発目がわたし。
それからノブくんたちのブレイクダンス。
そのあと3つバンドが続いて、その3つ目が一年生たち。
最後がDJとライブペイントだって。
…すごいすごい、ちょっとフェス感。
DJは3年生と2年生らしいけど、去年、大盛り上がりだったみたい。
なにそれ、音駒ってこんな自由なの?
DJで大盛り上がりできる文化祭って… って興奮してくる。
自分の、音駒高校への日頃の無関心さを強く感じた。
「でもさ、Lover Soulも良さそう」
「…俺ら5分くらい余ってるから一曲入れても良くない?」
「2曲歌ってもらうってこと?」
「…マジか、それいいな」
「くだらないの中に、も歌ってもらってもいいけど…ってそれはやりすぎだな」
「…だな、2曲に収めよ。 …あ、いやでもな…」
「DJの前に盛り上げるっていうよりはしっぽりいきたいから…」
一年生の彼らはわたしの歌なんて聞いたことないのに、
なんでこんなに確信を持ってわたしを参加させようとしているんだろう。
…不思議だ。
不思議だし、そもそもステージで歌うなんてしたことないし、
したいかしたくないかって聞かれたら、しなくていいです。って感じなんだけど、
この。 なんだろう。 この、ちょっとやっぱり旅っぽいこれ。
さっきの出会いが今ここにつながる感じは、その波に乗りたくなってしまう。