第29章 山茶花
ー黒尾sideー
「…これはどういう状況よ」
山本のクラスの出店の焼き芋を食いに来たら、
例の如くあの2人がすやすやと仲良く寝てる。
椅子に座って、穂波ちゃん研磨の肩にもたれて、
研磨は穂波ちゃんの頭に顔を預けて。
…何回目だ、これ。
この寝てる図ってのは何度か見たとはいえ、
今回いつもと違うのは、写真部がカメラのシャッターを切ってること。
それから起きた時の表情が撮りたいからと構えてること。
それからこの2人のうたた寝を、起きるまで無事見届けれると
願いが叶うか、恋が実るか、運命の人に出会うだかなんだか、
よくわからんジンクスが流れてることを、たった今、知った。
なので、結構な人だかり。
音駒生はもちろん、他校生、保護者、地域の人…
教師までにやにや見てるじゃねーか。
山本のクラスの焼き芋は大繁盛ってわけで…
夜久「くくっ 笑 相変わらずすげーな、こいつら。文化祭でもかましてる」
海「でもいつ見ても本当に、気持ちよさそうに寝るよなぁ」
山本から焼き芋を受け取り食いながら眺めてると
研磨の頭がだんだん、だんだんずり落ちてる感じ。
そろそろ起きるかー?
見守ってるギャラリーは起きるのを待ってるのか、
寝てるのを見てたいのか… よくわからんが、声を潜めている。
がこんっと研磨の頭が落っこちて、
穂波ちゃんのおでこに研磨の後頭部ら辺が当たる。
研磨はまだ目を瞑りながら元の位置に戻っていくけど、
穂波ちゃんは薄らと目を開けて研磨の顔を覗く。
首を伸ばして、寝てる研磨にキスをする。
夜久「…これまだ寝てんじゃね?穂波ちゃんも」
クロ「…だな。完全に寝てるな」
興奮高まる女子達は互いの肩をつつき合ったりしばきあったりして…
声を出すことを堪えてる様子。
…誰にも起こしてもらえないってのも面白いよなー、こいつら。いつもいつも。
ま、俺も起こさないんだけども。
穂波ちゃんは電池が切れたみたいに
コクリと元の位置に戻っていく
そこで研磨がうっすら目を開けて…
「…ん 足りない」
…って言ったよな?
後頭部に手を添えてぶちゅっとキスを返した。