第29章 山茶花
首から手が離れてすとんっと頭が膝に戻る
…でも足りないなぁ
もっともっと欲しいなぁ…
研磨くんがまたゲームを始めちゃう前に…
身体を丸めて口付ける
一度じゃたりない、ゆっくりと何度も、優しく啄むように。
研磨くんの手がまた首の後ろに回って、
さらに深く 口付ける。
コンコンッとドアがノックされ、
少しだけドアを開けてお母さんが要件を言う。
「研磨、そろそろ出るねー。穂波ちゃんゆっくりしていってね」
!
慌てて身体を起こそうとすると、
首に添えられた研磨くんの手にぐっと力が入る。
「…ん、行ってらっしゃい」
『…あっはい!ありがとうございます』
身体を丸めて下を向いたまま研磨くんの顔がすぐそばにあるのに、
他の人に喋るのってなんだか… 変な感じだ。
「それからお昼のことありがとう。よろしくね。じゃあ行ってくるね」
そう言って扉を閉めると、階段を降りていく足音がする。
「…お昼のこと?」
『あ、うん。作りたいなぁと思って材料持ってきた』
「…わ。やった。うれし』
…ふふ。研磨くんのやった。が口からこぼれ出るのを聞くのは、
まるでゲームのコインとか特別なアイテムとかを集めていくみたいな。
すっごく大きなものじゃなくて、小さく深い幸せが溜まっていく感じ。
「…穂波の背中がこんなに丸まってるなんてそうそう見れない」
『…ふふ』
まだ頭の位置は固定されたままで、
研磨くん顔はすぐそばにある。
「…葡萄の匂い。 おれも食べよっと」
『…どーぞ。でもその前に、もう一回だけ』
長く、深ぁいキスを一度。
ゆっくりと唇を離すと、
互いの唇が離れがたいとでもいうかのように、
ぺとってくっつき合ってるのがわかる。
…これ、好きだなぁ