第29章 山茶花
『いや〜 高校の文化祭で一人でフラを踊ってもなぁって思って。
キャッチーなのがいいかなぁって、タヒチアンとか。
カズくん、フラガールって映画観たことある?最近の映画じゃないけど、さ』
「…いや、ない。おれ別にフラが好きなわけじゃないから」
『…ふふ。 その映画の最後の方で女優さんがソロで踊るシーンがあるんだけど
それをそのままする。もう一つその前か後に衣装変えて、ちょっと違うの踊ろうかなぁとか』
「…ふーん。研磨は良いって?」
『…ん?』
「タヒチアンってフラより激しいじゃん」
『あぁ、研磨くんはまだタヒチアンは見たことないから』
「…あー そっか まぁ、研磨は別にって感じなのかな。
おれ結構いやかも。 見に行くけど」
『えぇっ だめかな? マニアック? 何、理由は』
「エロい。 …だから、海みたいに開放的なとこで調和されないと」
『うっそ、そんなこと考えたことなかった』
「ていうか衣装変えて何踊るの?」
『中学の時に習ってたオリエンタルダンスのクラスでやった、ゆっくりしたやつ。
華もあるし、タヒチアンとギャップがありすぎないし』
「馬鹿だ穂波」
『えぇっ』
「人からどうみられるか気にしてないとこ好きだけど、
ちょっとはやっぱ気にした方がいいよ。演目変えれるの?」
『いや、大幅な変更は不可。 …え、ちょっとだめかな?お目汚しになるかな』
「…穂波って何でそうなんだろう。いい加減気付かないの?
…でもまぁ、変えれないならしょうがないし、半端なことやってもね。
いつもみたいに踊ればいいよ、おれ穂波のダンス好き」
『…ん。カズくんにそう言ってもらえるのはすっごく嬉しい。
…ので、楽しんでもらえるように、わたしも楽しむ。
…今まで人に見てもらうことが原動力になったことないからさ、
今も正直そんなにまだ、って感じなんだけど。
いろんな人の頑張ってる姿見てると、やっぱり多方向に感化されるね』
「…おれはまだその辺はよくわかんないけど。
衣装はちゃんと人に相談しなよ、ダンサーじゃない人にも。あ、次錦糸町」
錦糸町駅から体育館へと歩いて向かう。
あー、ドキドキしてきた。