第28章 しらす
ー穂波sideー
【俺の方こそありがとう。穂波もいろいろ頑張って】
お弁当を食べ終わり、研磨くんはゲームをしてる。
携帯電話をチェックすると白布くんからLINEが入ってた。
簡潔で当たり障りのないような文章。
でも送り主の人柄を知ってるから、心を感じる。
【うん、今度スケボーしようね】
…なんか違うなぁ
【うん、ありがとう】
…? ありがとうしか言ってない。
メールはやっぱ苦手だぁ…
打っては消して打っては消し、を数回繰り返す。
「…ふ 笑」
『………』
「困ってる。メール?」
『うん、白布くんに返事』
「ふーん」
研磨くんとはメールは事務的なことの連絡手段というか。
電話ください、とか、〇〇時に着きますとか。
そういう風にしか使うことがなくって。
話したいなら即電話、会いたいくて会えるなら会いに行く。
芽衣とかとは、もっとこう、あっちがいろいろ話してくる感じ。
それを読んで、短く返す。返事が長くなるなら電話する。
蛍くんはマメで、すぐに返事が来ることが多くて、
ちょっと喋ってるみたいな感じになって、
メールが得意じゃない、マメじゃないわたしもチャットっぽい感じでとんとんとんって進む。
カズくんや周平とのメールの使い方は研磨くんと同じ感じだし…
なんとなく白布くんとのメールは、
わたしの経験したことない分野な気がする。
連絡先をあまり交換しないで今まできた、わたしにとって。
なんていうか、携帯を左手に持ちながら、
とても初々しい気持ちになってる。
『どれもしっくりこなくて、みんなぽんぽこやりとりしてすごいよね』
「…ぽんぽこ」
『なんていうか、白布くんにはこっちから連絡を断つことができないなと感じてる』
「忘れてた間も想ってもらってたことに対する引け目?」
『…そうなのかな? いや、そんな後ろ向きな感覚ではないけど』
「ふーん」
『ごめんね、こんな話』
「…別に、いいけど」
今度〇〇しようね、って打ってみると、
じゃあその日までさようなら!って感じが途端にするのは何なんだろう。
そんなの日頃、おしゃべりしてる時は何度も言うことなのに。
蛍くんには平気でそう返すのに。