第28章 しらす
「…なんかちょっと、つまんないな」
そう呟いて研磨くんは机に突っ伏せ、わたしを見上げる。
今日は雨で、教室にいる。
研磨くんの前の席の椅子を借りて、向かい合って座ってて。
『…あ、ごめん。やめるね』
携帯をしまおうとすると、
「いや別にいいんだけど、いいよ、そのままで」
『…?』
「多分普通なんだろうけどさ」
『………』
「みんな普通にケータイいじるでしょ、誰といても」
『あぁ、うん』
「でも穂波はさ、基本携帯みないじゃん。携帯不携帯なんてザラだし」
『………』
「…今の状態ってあんまない。家とかでメール返しててもカズマとか周平とかだし」
『………』
「…相手が知らない男で、その返信を打っては消してってしてるのは、つまんない」
『…えと、ごめんね。しまう』
「いや、だから、いいんだけど」
…どういうことだろう
「だって、今返さなかったらまだ考える時間続くんでしょ」
『…いや、研磨くんと話してると色々は一旦どこかへ行ってしまう』
「…ふ 笑 そっか、じゃあ別につまんなくないかも」
『…?』
「なんでもない。 気にしないで続けて。おれは今、フィールド拡大中」
『…?』
いやいやもう、考えれないよ。
『研磨くん、わたしとデートしてくれませんか』
「え?」
『手を繋いで校内を闊歩したいです』
「…闊歩はしないけど、普通に歩くなら」
『…笑』
「それってデートなの?いつもしてるじゃん」
『デートだと思えばデートなの』
「じゃあ、ココア買いに行く」
『うん、じゃあ自販機まで』
携帯もゲームもしまって、
いつものように2人で手を繋いで廊下を歩く。
研磨くんは、カップの自販機の前で少し悩んだ。
「ココア飲みたいけど、別に美味しいんだけど、
穂波が作ったのを飲むようになってから薄いなって思うんだよね。
それならコーンポタージュの方が良いかなって思うんだけど、でも今気分じゃない…」
真剣に、悩んでて、かわいかった。
悩んだ末にココアを買って、両手で包んでふーふーと飲んでいる。
あーずるいな、あぁかわいいな。
もう10月も終わる。
11月… 春高の選抜大会はすぐ、そこ。