第28章 しらす
…って俺は何言ってんだよ。
彼氏でもなんでもないし、
それどころかそもそも今日、すっげー久々に会ったやつにそんなこと言われてもな。
『…だよね、ごめん、濁した』
「いや、俺こそごめん。でしゃばった」
『いやいや、白布くんはそれでいいんだよ。
ちゃんと真っ直ぐ聞いてくれてるのに、濁すのとか失礼だった。ごめん』
「………」
「なぁ、穂波。ほんとにこいつと会ったのあの海以来なの?」
いつの間にか遊児が向かいに座っていた。
『あ、遊児。…ふふ、そうだよ。話しててぜーんぜんそんな感じしないけど』
「おー なんかムカつくくらい、普通に話してんな」
『ね。でも実は知らないことがたくさんあるから、さ。…遊児は……』
「いやまずさっきの続き、ちゃんと聞かせて」
遊児に進路の話題振ろうとしただろ今、絶対。
それが穂波の当たり前なだけで、
別にさっきの話から逃げてるわけじゃないんだろうけど。
俺はもっと、穂波のことが知りたい。
限られた時間しかないわけだし。
『あ、そうだった。 えーっと…』
「オーストラリアが有名なんでしょ、海洋学」
『そうそう、そうなんだよ。でもカリフォルニアが妥協なわけじゃなくって…
カリフォルニアも有明なんだよ。それで、まぁ、いろいろと』
「また、それ。別に立派な理由を言えって言ってるわけじゃないんだから。
たかが俺だぞ? 別に資金提供するわけじゃないんだし。なにビビってんの?」
「お前のその冷たい目と言い方にビビんじゃねーの?なんかウザい」
「あ?」
「あ?」
『遊児、わたしのこと気遣ってくれてありがとう。でもね、大丈夫だよ、ビビってないよ。
白布くんにははっきりとした目的があって、わたしはふわってしてて。
ふわってしてるのを悪いとは思ってないけど… 話すのを躊躇しちゃってるね。
多分こういうのはこれから過ごしてくうちになくなったり、
ちょうどいいとこに落ち着いたりするんだと思う。
だから今はこうやって、白布くんが我慢せず言うくらいがいいんだよ。
わたしも、痛気持ちいい』
「…はぁ 気が抜ける。 最後なんでそういうとこに落ち着くんだよ。
なに痛気持ちいいって… 真面目に話してんのに」
『痛気持ちいいも大真面目なんですー』