第28章 しらす
ー白布sideー
『ねぇ、白布くん』
「なに」
『昨日の試合、すごく感動した。
…選手にとっては勝敗もすごく大事だろうから、言おうかずっと考えてたんだけど。
でもやっぱり、言う。 白鳥沢、かっこよかった。白布くん、かっこよかったよ』
家の中でお茶を飲みながら穂波にそんなことを言われた。
「俺が、かっこいい?かっこいいのは牛島さんであって…」
『牛島さんは確かにかっこいいけど、白布くんもかっこよかった。
なにがどうとかは、わたしにはわかんないけど…』
「…ありがと」
素直にその言葉を受け取っておこうと思った。
『わたしもがんばろーって、気持ちがしゃんとした。
ありがとう。 あ、今度スケボー持ってくるね』
「あぁ、うん。 穂波はもう、進路のこととか考えてんの?」
『…ぼちぼち。 多分アメリカの大学に行く』
「あーそっちか。 …ほんと、会える時に会っとかないとだね」
『白布くんは、学部とかももう決まってるの?」
「うん、まぁ一応」
『すごいなぁ… 部活も一生懸命やって、進路もしっかり見据えて。
白布くんはコートの外でもかっこいいね』
「はっ!? ちょいちょいそういうの挟んでくるのやめて…調子狂う」
『あはは、ごめん』
「穂波は?学部」
『アメリカの大学は学部決めなくても入れるからさ。
3年になるまでに決めればいいんだ。途中で変えれるし…
なんかこの言い方だと白布くんみたいにもう決まってる人には…』
「…そんな怖がらなくていい。穂波を考えなしだとは思ってないし」
『…ん。ありがとう。白布くんは何を勉強するの?』
「…医学部で医者になる勉強を、できたらいいんだけど」
『ほぇー… お医者さん…』
「…俺のことはいいよ。それで、穂波は?」
『学んでみたいことが文系理系どっちもでいくつかあって。
アメリカならダブルメジャーできるし、学部変更もできるし、とかとか。結局曖昧』
「学んでみたいこと」
『一番は海洋学…フィールドワークやりたいなぁって』
「へぇ… アメリカにいいとこがあるんだ?」
『オーストラリアが一番進んでるんだけど、まぁなんか色々、さ』
「ごめん俺、そういう風に曖昧にされるの好きじゃない」