第28章 しらす
「話してると、頭ぶつけてることとかそのあたりの記憶が途切れ途切れになっててさ。
医者は大丈夫って言ったって聞いてもすげー怖かった。チビだったし」
そんな話初めて聞いた。
「その年の夏休みの間は毎日毎日、朝晩と仏さんに熱心に手を合わせていたね。
お茶のお稽古も随分と熱心にしてたわ」
『…ふふ。 そっかぁ、遊児わたしのために手を合わせてくれたの?』
「…まーな」
『ありがとう。お陰でいまもわたし元気だし、
こうしてまた白布くんに巡り合わせてもらえたよ』
「いや、そのために手を合わせたわけじゃねーけど」
『でも、白布くんにまた会えたから思い出したことがあって、今日もまた会えたんだよ。
今日蛍くんと会う約束なかったら白布くんには会えなかったし、
バスで帰ってても会えなかった、すごい色んなことがあって今があるんだもん…』
何の話してるのかわからなくなってきた
「会える時は会えるものよ。
穂波の予定が変わっても変ってなくても、きっと会えたと思うわよ」
「っつーか何だよ蛍くんって。あーなんかすげーやだ。
宮城にいる穂波にも俺以外の男が寄ってくるとかすげーやだ」
『遊児今日そんなことばっか言ってる。ねぇ、あとでトランプかUNOしよ』
「おー!いーねー!お前もやれよな!」
なんだかんだで白布くんのことを気にかけてる遊児が好き。
食べ物のお皿を渡したりとか、こうやって話しかけたりとか。
やっぱり何事もその人らしさが滲み出てるとぐっと魅力が増す。
遊児はやっぱり、楽しむこと、アソブことに焦点を当ててるのがいい。
白布くんは無理にそれに合わせなくっていい。
合わせないのが良い。 それが、良いんだよなぁ。
一見凸凹でも、少し離れて見てみるとまぁるくおさまっている。
どちらかが無理をしてると、
一見まぁるくても 実はざらざらしてたり 凸凹してたりする。
無理がないのが、やっぱり良い。