第28章 しらす
ー穂波sideー
「穂波、約束思い出した」
せっかくなので仏さんで手を合わせた。
その間待っててくれた白布くんが何か思い出したみたい。
『約束? あっ今日?』
「うん、穂波としてた約束」
『えっ、本当?なになに?そういうのワクワクするね』
「2つあるんだけど、俺はどっちもできる」
『わぁ、なんだったっけ?思い出せるかなぁ…』
「穂波おそーい!男と2人きりで離れた部屋行くなし」
遊児が襖をばーん!と開けてそんなことを言う。
『遊児、そんな開け方したらだめ。仏さんにご挨拶してただけだよ。
今日も一日ありがとうございますって、遊児もした?』
「着いた時にばあちゃんにさせられた」
『うん、じゃあ白布くんご飯食べに行こうー』
白布くんは魚屋さんでしらすを2袋買っていてくれたらしくって、1袋わたしにくれた。
白布くんとの話に気を取られてすっかり忘れてたので嬉しい。
しらすを冷蔵庫にしまってから、おばあちゃんの近くに場所を開けてもらって並んで座る。
おばあちゃんの斜め向かいに白布くん。
その右にわたし、それから遊児。
おばあちゃんに改めておめでとうを伝えて、ご馳走をいただく。
「あー思い出した!お前か!しらすが好きなやつ!」
「………」
『遊児も知ってるの?』
「穂波がすっげー話してくるから、ムカついたこと覚えてる」
『へぇ、わたし何言ってた?』
「すきなひとができた!っつってた。アキくんが陰ですげーショック受けてた」
『へっ うそ! ほんと?』
「………」
『でもなんで忘れてたんだろう。ぽっかり抜け落ちたように…』
「…それは、多分」
『うん』
「俺が忘れろって念じたからだな」
『…笑』
「だってせっかくの夏休みなのにずっと、そいつの話ばっかしてきてさ。
すげー念じた。そんで穂波滑って頭ぶつけたんだよ。川で」
『えっ覚えてない』
「念のため病院行って診てもらって、何ともなかったけど、
俺が念じたせいで頭ぶつけたのかもってすげー反省した。
変な念は使うまいってそん時心に誓った」