第28章 しらす
ー白布sideー
『研磨くんはね、わたしの彼だよ』
…あぁ、彼氏。
あれ?烏野の眼鏡はそんな名前じゃなかったよな。
穂波が通ってる高校のバレー部の合宿の手伝いをさせてもらって、
そこに烏野が参加していて、烏野バレー部と知り合ったって言っていた。
それで、観にくることになった、って。
てっきりそれは明言を避けてるだけで、
昨日抱きしめてた眼鏡のやつと付き合ってるってことだと思っていた。
…そういえば昨日五色にも抱きついていたし、
小2のころ海で遊んで、いよいよ帰る時間ってなった時
抱きしめられて、そして抱き返すように促された気がする。
『しらぶくん、お別れの時はハグするんだよ』
「ハグって何?」
『ぎゅーってするの。だいすきな人とバイバイする時は』
「何それ、俺はやんなくていい」
『でもわたしがしたいんだもん。していい?またね、だよ』
「………」
『今日ありがとうって気持ちも、元気でねって気持ちも、
またねって気持ちも全部全部のせれるんだよ、ハグに。やろうよ!』
「…じゃあ穂波からやって」
穂波は俺をぎゅって抱きしめて、
しらぶくんもぎゅってしてって言った。
それで俺も抱き返した。
母親や祖母ではない、
同世代の女の子を抱きしめるなんて初めてのことで
すごくどきどきしたんだった。
『ねぇ、しらぶくん。また会えた時は、またハグしようね』
「うん」
『で、チュウもしようね』
「チュウ? …チュウ って馬鹿かお前!」
『だってわたし、しらぶくんが好き。しらぶくんはわたしのことすき?』
「…はぁっ!?」
『お母さんとお父さん、好き同士だからチュウするんだよ』
俺の両親がキスするのなんて当然見たことなかったけど、
穂波の両親は確かにキスしてそうな雰囲気があるって子供ながらに思ったんだっけ。
また会えたら、またハグしよう。か…