第5章 夏
ー穂波sideー
『…お風呂いれようと思ってたけど、熱いかな』
「…どうだろ。…少し温めで」
『入ろっか♪じゃあいれてくるっ』
「一緒に?…心さんたち帰ってきたら…」
『…まずいかな?…いや?』
「…おれはいいんだけど、どう思うかな…」
『………研磨くん、ありがとう。』
「え?」
『考えてくれてありがとう』
「…ん。」
『…でも、入りたいナ…』
「…連絡、来てない?」
時計を見ると23:00。
携帯には少し前にお母さんからメールが入ってた。
【00:00には帰る。また洋ちゃん家出るとき連絡する。
研磨くんまだいるの?帰るんなら車で送ってくから、家にいるように伝えておいて】
『研磨くんっ、見て』
研磨くんはメールに目を通すと、
「…ん。じゃあ、お風呂入ろっか。…なんか見越してたみたいなメールだね」
『…だね。笑 まだ向こう出てないのに連絡くれてた。…あっ』
「…ん?」
ソファのマルチカバーにはしっかりとシミがいくつかできていて…
お風呂にお湯を張ってから替えのカバー、持ってこよっと。
「…あ、ごめん。ソファではじめちゃったの俺だ…」
カバーを外してるのをみて察したのか、研磨くんが言う。
『ん?謝らないで? 双方合意の上だよ。笑
カバーは洗えばいいから大丈夫っ。お湯いれてくるね
…あっ、研磨くんこそお家に連絡しないとっ』
「…あ、うん。…そうだね」
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お風呂の栓をして、お湯張りボタンを押す。
二階に行って、棚から替えのマルチカバーを取り出して
研磨くんのパジャマになりそうな服をお兄ちゃんの部屋から借りる。
ちょっと大きいかな…
倉庫に行くのが億劫で…
下に降りてマルチカバーをソファにかける。
研磨くんはどこかな?と思ったら
テラスに出て椅子に座ってた。
こういうとこって言い出すとキリがないけど、
自分のやりたいこととか、気持ちいいことはちゃんとわかってるとこ。
そのためにちゃんと動けるとこ。
我慢をして、物静かにしてるわけじゃないってとこ。
自分のしたいことには消極的じゃないとこ。
猫みたい…
研磨くんの研磨くんらしい、数知れない魅力のひとつ。
わたしは家の中でお茶を飲みながら
ぼんやりとその後ろ姿をみつめることにする。