第28章 しらす
ー月島sideー
あんなことやこんなこと、
されてないってのは嘘だけど本当だ。
すりすりするだけじゃなく、脚は絡めようとしてくるわ、
服の裾から手を入れてお腹を触ってくるわ、
あまりに寝顔が可愛くて額に一度口付けると、そのままキスをしてくるわ…
他の男にしなければ、いいんだけど…
ソファに移動して、買ってきたものを食べる。
って言っても、ずんだ餅とチョコレートだけ。
部屋にあったウォーターサーバーのお湯で
穂波さんがお茶を淹れてくれた。
ティーバッグを持ち歩いてるらしい。
…穂波さんらしいな、と思う。
『…ふふ、蛍くん。 ここにずんだ餡が』
穂波さんは僕との距離をぐっと縮めて、指で口元を拭う。
「…それ、どうするの?」
『あっと、ティッシュで拭きます』
「…舐めようとした?」
『………』
「ほんと、困った人。前にそれやって、僕に指舐められたの忘れました?」
顔を真っ赤にしてブンブンと首を振る
「あははっ ごめん、今日一日からかってなかったから。
その顔もみたいなぁと思っちゃいました」
『もー蛍くん…』
「はい、ティッシュどうぞ」
『…ん ねぇ蛍くん』
「はい」
『マッサージしようか』
「…はい?」
『あんまいろんなとこはできないけど、手のひらとか足の裏とか」
「………」
『…いやだったらいいんだけど』
「いや、いやじゃないけど、また突然でちょっと驚いただけ」
『…あ、でも手のひらは痛いかな。脱臼してない方もちょっと腫れてるよね。
腕にしようかな。ここも、気持ち良いんだよ』
左右の手首から上を揉んでくれて、
それはとても気持ちが良かった。
僕に触れながら
穏やかな声で楽しそうに話をする穂波さんを見てるだけで癒される。
『…じゃあ次は足の裏』
「…それは是非やってもらいたいけど、もう時間。行かないと」
『あ、そっか』
「…またの機会にお願いします」
『うん!』
笑顔でうん!って言うけど、
足の裏を揉む機会なんてこういう風に部屋とかに来なきゃないと思うんだけど。
この人わかってて言ってるのかな。
…まぁ、別にいいんだけど。