第28章 しらす
ー穂波sideー
初めてラブホテルなるものに来たけど、
普通にお洒落なホテルだなぁという感じ。
ベッドの横の戸襖を開けるとベッドの長さと同じだけの大きな鏡があったりとか、
なんかちょこちょことあぁ、なるほど…と思うところはあるのだけど、
でも鏡も隠れてるし、ぱっと見はお洒落な内装で全然居心地は悪くない。
「え、ここに来てそこに座るの?笑」
壁にあるテレビに向かうようにソファがあって、
その後ろにベッドがある。
ソファに座っちゃうとベッドに横になるだろう蛍くんに背中を向けることになるなぁって思って、
ベッドサイドにある椅子に座ったら蛍くんに突っ込まれた。
「隣くればいいよ。大きいし。何もしないから」
ベッドに並んで座るのはどうなのだろう、
とちょっと考えたけど、
ただそこがベッドってだけで距離的にはベンチとかソファと一緒だな、
というかそれより感覚空くくらいだもんなってことで、
蛍くんの隣に行くことにする。
気をつけれてるかな、わたし。
・
・
・
一緒に選んだのは去年公開された日本のアニメ映画。
1960年代、昭和の日本が舞台のアニメで、とてもいい。
挿入歌もすごくいい。
蛍くんは一度観たことあるけど、もう一回観たいからって言ってた。
蛍くんにはできれば眠って欲しいから
すっごく観たいやつより、観たことがあるやつがちょうどいいかも。とか。
蛍くんは横になるだけで眠る気はないって言ってたけど
蓄積されていたものは相当だっただろうな…
20分くらいしたところで、
「ごめん、ちょっと寝る。映画終わったら起こしてね」
と言って眼鏡を外して目を瞑った。
わたしはすやすやと寝息を立てて眠る蛍くんの横で
ヘッドボードにもたれかかり座って映画の続きを観る。