第28章 しらす
ー月島sideー
今思えば、最初の合宿から好きだったんだろうとも思うけれど、
どっぷりとこの人にはまったのは緑豊かな森然高校にいた時だ。
そこでまぁ、奇妙な接点ができて、
今がこうしてあるわけだけど。
カフェの窓から外の木々を眺める穂波さんは、本当に綺麗で…
この人はまぁ、どこにいても、
博物館でも体育館でも調理室でも…
変わらないし、綺麗だし、かわいいのだけど、
自然を目にしている時、それからそれらに囲まれているとき、
一際綺麗なんじゃないか。とかそんなことを思った。
力強くも一瞬で溶けて無くなってしまいそうな儚さが 顔を出すように思う。
『美味しかったねぇ』
「うん。 …ここさ、仙台市内にいくつかある店で。
でも全く同じじゃないんだよね。メニューも内装も違うけどどこも落ち着いた感じ」
『へぇ… じゃあ蛍くんと仙台でまた会う時に、行ってみようよ』
「そうだね、それもいいかもね」
『うん。やっぱり蛍くんといるの楽しい』
「それはどうも。 …ケーキ、決まってる? ていうかもう食べれる?」
空になった皿を下げられ、そろそろセットのドリンクが来る頃かな、と。
『うん、食べちゃおう!蛍くんは食べれる?』
「甘いものは別腹なんで」
『…ふふ ショーケース見に行こうかな』
「僕も行こうと思ってた」
立ち上がり、入り口付近にあるショーケースを見にいく。
『蛍くんはショートケーキ?』
「…そう、だね」
『このモンブランショートケーキ?』
「うん」
『…じゃあわたしはロールケーキにする』
「じゃあ、って。別に同じので良いよ」
『どのみち迷ってたの、この2つで。だから、こっちにする』
レジのところにいたスタッフにケーキもオーダーして席に着く。
側から見たら僕らはカップルなんだろうか。
ここでは合宿と違って、やきもちを妬く対象もないし、
知り合いに会う確率も低いし…
気が一層緩む。意地悪を言う気も起きない。