第28章 しらす
ー穂波sideー
【予定してたバスに乗れたよ◎また後でね!】
バスに乗車して蛍くんに連絡を入れとく。
今は、病院かな。
蛍くん、あんなタフな試合翌日に会ってくれるなんて…
楽しもうなんて思わなくてもきっと楽しいけど、
でも、楽しもうって思う。
蛍くんが疲れることなく、
楽しく過ごしてくれるといいな。
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【穂波さん、駅より3つ手前のバス停で降りてもらっていい?】
道中で蛍くんからLINEが入ったので、
その通りにバスを降りた。
「穂波さん!」
後ろから声をかけられる。
『わぁ、蛍くん!おはよう』
「おはようございます。あの、今日なんですけど、博物館でもいいですか?」
『うん!嬉しい。…地下鉄?バス?』
「兄貴が会いたいって言ってて… そこに車停めてるんだけど、車で行くんでもいい?」
『え、あ、うん。もちろん。ありがたいね』
「ありがたい、ですかね… じゃあまぁ、あっち行きましょう」
蛍くんの私服初めてみた。
黒のチェスターコート、黒い細身のパンツ、黒いスニーカー。
コートの下に淡いラベンダー色のフーディと黒いナイキのウエストポーチ。
ズボンの裾から濃いラベンダー色と白のタイダイっぽい靴下がちらりと覗く。
背が高くて線の細い蛍くんによく似合ってる。
髪の色も目の色にも差し色のラベンダー色が合ってて、絶妙。
サイジングも完璧。
スマートだけどちゃあんとカジュアルダウンされてて、あぁ絶妙。
反則。
「…どうしたの?」
『あ、いや蛍くんかっこいいなぁって』
「それはどうも。穂波さんもすごくかわいいですよ」
『…ん、ありがとう』
…普通に照れるし、蛍くんの馬鹿。
「おーい、蛍!」
長身で細身の男性が向こうから手を振ってる。
髪の色は蛍くんより落ち着いた感じ、亜麻色に近いような綺麗な色。
「はじめまして。蛍の兄の明光です。いつも蛍がお世話になってます」
表情も物腰も柔らかな人。
蛍くんの大好きなお兄さん。