第28章 しらす
ー穂波sideー
「あったあった。これよ、これが白布くん達と海で遊んでいる写真」
夕方、おばあちゃん家に帰ってきて
おばあちゃんと夕飯の支度をしながら
しらぶくんについて尋ねてみた。
髪の色と苗字しか伝え得ることができなくて
でもそれだけでおばあちゃんはあぁ、三兄弟の。と、呟いた。
亜麻色の綺麗な髪の毛は確かに印象的だったな…と思う。
でもどうしてこんなに思い出せないんだろう。
人の名前を覚えるのは得意な方だと思うんだけど。
夕飯を食べて片付けを終え、お風呂まで済ませてから
おばあちゃんは写真を探してくれた。
砂浜で、わたしとお兄ちゃんと白布くん三兄弟が遊んでいる写真。
バケツ、スコップ、水着の色…
だんだん思い出せそうな気がしてくるんだけど…
今一歩掴みきれない。
『これってわたし小学生?』
「そうね、小学2年生かしら」
『おばあちゃんも一緒にいたの?』
「いいえ、私はお稽古で家に居ましたよ。心と茂親さんとあと潔さんが一緒だったわ」
『おじいちゃんもいたんだ。何でこんなに思い出せないんだろう』
「…ふふ 何ででしょうね」
『今日会ったのはこの、真ん中の子かなぁ。そんな気がする』
「真ん中の子は穂波と同学年だった気がするけれど…」
『…お母さんの友達のお子さんとかなの?』
「いいえ、末っ子のこの子の流されてしまった浮き輪を、
上のお兄ちゃんが取りに行こうとして溺れかけたのをあなたが助けたと聞いていますよ。
それで仲良くなって、その日は1日この5人で遊んでいたと」
あぁ、思い出した。
お兄さんの名前も弟くんの名前も思い出せないけど…
家族でサーフィンをしていたら
溺れそうな男の子を見つけたんだ。
お母さんもそばにいたけど、わたしが一番近くて
とっさにパドリングして彼のところへ向かった。
それからサーフボードに掴まってもらって
呼吸が落ち着いたらボードの上に寝転んでもらって
普通に元気にお喋りができていたので
安心してぷかぷかと浮かびながら岸へと運んだ。
波打ち際にいた2人の男の子が
自分のサーフボードに寝そべってる子の兄弟だってことは一目でわかった。
亜麻色の髪、顎のしゅっとした輪郭。
パーツに個性はありながらも、3人ともそっくりだったから