第28章 しらす
『…ほぅ 嬉しい。ありがとう』
「あっ いえっ とんでもないです!」
なんて可愛いこなんだ。
わたしが器用な人間で、2人も3人も同時に愛せるなら
この子を可愛がりたい… …って何考えてんだろ
『まだ全然知らないもんね。それなのにこんな真っ直ぐ好きって言ってくれて嬉しいよ』
「あっ はい! 好きです!」
「工ぅ〜、そんな何度もいうことじゃないのー」
『工くん、ナッツは食べれる?チョコとか』
「はい!」
『これ良ければどうぞ。あ、ほんと、良ければだよ。強制じゃないよ』
「おいしいよーん、それ」
工くんは一つ手に取り、口にせずに眺めてる。
…かわいい
『あの、お名前聞いてもいいかな?』
「天童覚。 覚醒の覚って書いてサトリ …だよん」
『覚くん… わぁ、すごい かっこいい名前。
覚くんたちはいまどんな時間なの?まだ帰らないの?』
「一度もう出発したんだけどね、すぐそこでバスのタイヤがパンクして今はタイヤの交換待ち。
そろそろかなぁーっとは思うんだけど」
『そっか、覚くんは3年生?』
「うん。工は1年の次期エースだよ」
『うんうん。そんな感じしてた。…じゃあ、もしまたどこかで会ったら話そうね』
「うん、穂波ちゃん バイバ〜イ』
「あっ えっと、その…」
『………』
「連絡先なんて…」
『…ふふっ 工くん、ハグしよっか』
「えっ」
『…しても良い?』
「あっ はいっ!」
ぎゅうと抱きつくとブリスボールを持ったまま工くんは固まってしまった
背伸びをして耳元に近づこうとしても、遠い…
固まってて屈んでくれない…
仕方ないので背伸びしたまま見上げて話す
『工くん、んと、もし次会えたら、その時は連絡先交換しようね』
「あ… はい」
『ごめんね、わたしすぐキャパオーバーしちゃうから。また見かけたら声かけてね
それまでお互いの日々をしっかり過ごそうね。
次会った時もっと格好良くなった工くんに会えるの楽しみにしてるね』
「あっ はい!」
シュンとしたかと思えば メラメラと炎を宿す。
真っ直ぐで可愛い子だなぁ…
2人にさよならして歩き出す。
大きなバスの横を通り過ぎる。
あぁ、しらぶくんの名前聞いておけばよかった…