第28章 しらす
「うん!ナッツ食べれる。えぇーいいの? ほんとにいいのぉ?」
うわぁ、この顔なんだろう。
この顔見るためになんでもしたくなっちゃいそう。
あぶない!
『どうぞ、元気玉です』
「元気玉? じゃあ、一つもらうねーん」
人差し指と親指で一つつまんで、それから小さく齧る。
…あぁやっぱり。 試合中もだったけど、この人から目が離せない。
むしゃむしゃむしゃー!って食べてもそれはそれで雰囲気と合わさって良い感じっぽいけど…
彼はきっと、少しずつ綺麗に食べる人なんだろうな。
これが自分の部屋でも。ひとりで食べるハンバーガーでも。
「ぅう〜ん おいしい…」
斜め上を見上げながら恍惚とした表情で呟く。
よかった、口にあって。
「天童さん、何してんすか?」
「んん〜? いま味わってるところ」
「何をっすか、 っていうか うわ! きっきれい………」
「ん? あれ工、この子タイプぅ〜?」
「…あっ えっ はい!」
「ブフォッ …実直だねぇ、工は真っ直ぐでかっこいいねぇ」
つとむくん。
かわいいかわいい8番の君はつとむくんというのか。
「はっ はじめまして!!
俺、五色工っていいます!お名前お伺いしても良いでしょうか!」
『へっ』
「あっれぇ、工。落ち込んでるんじゃなかったの」
「落ち込んでます!悔しいです! でも今はそれどころじゃ…」
『運天穂波です。 …五色って五つの色って書くの?』
「あっ はいっ!そうです!」
…きゃあ、すっごい可愛い
『綺麗な名前だね、ちなみにつとむはどうやって書くの?』
「大工の工って書いてつとむです!カタカナのエ、みたいで…」
「ブッ… ごしきえって画法か何かみたいだね」
『へぇ… 工。 良い字だね。 わたし工っていう字、すき』
「あっ ありがとうございます! 自分も好きです!」
『うんうん、自分の名前が好きって思えるって、いいね』
「あっ いやっ はい! でもそうじゃなくって…」
『…うん?』
「あなたのことを好きになってしまいました!」
「工〜!大胆っ!」