第28章 しらす
「ねぇ、きみ。この辺の子?」
トイレからでて歩いていると、
さらさらの茶髪で笑顔の爽やかな、眼鏡をかけた男性に声をかけられた。
『…?いえ、この辺ではないかな』
「バレー部に彼氏がいるのかな?」
『あ、はい、そうなんです。今日初めて公式戦を観戦しました。
すごいですね、ちょっとまだ興奮が覚めなくって…』
「ちぇっ、彼氏いるのかぁ…
俺から声をかけるなんて早々あることじゃないんだけど」
「おい、及川!」
「何、岩ちゃん、邪魔しないでくれるー?」
「いや、授賞式見たいのをお前が邪魔してんじゃねーか?」
「あ、そっか。 ごめーん。 じゃあ俺らは授賞式はパスだから」
『…及川さん。 …及川さん? わ! セッターの及川さん?』
「わー俺の名前、知ってくれてるんだね?嬉しいなぁ。
下の名前は徹。及川徹。君の名前は?」
『運天穂波です』
「穂波ちゃん!話もまだあまりできてないし、
彼氏持ちにいきなり連絡先聞くなんてのは俺のやり方じゃないからなぁ。
また会えたら声かけるね!その時はお茶でもしよう」
『あ、はい。及川さん、また…会えるかな?』
及川さんは宮城の人だよねぇ…
会うこと…なくはないか
「なに?やっぱり連絡先交換しないと心配かな?」
『え、いや、会えたらすごいなぁって思って』
「ははっ あ、そういえばどっちの学校にかれs……」
「あれっ 穂波ちゃん?」
後ろから山口くんの声がする
『あ!山口くん!すごかった!ほんとすごかったぁ…!』
「あっ 青葉城西の…」
山口くんがぺこりと会釈をした。
「ふんっ 烏野かっ えっ、まさかトビオちゃんなわけ… いやいやそんなわけ…」
「おい、及川いい加減にしろ。帰るぞ、コラ」
及川さんは岩ちゃんという人に首根っこを掴まれて連れて行かれた。
『あっ 及川さん、また、どこかで!お茶しましょうね!』
あの2人も幼馴染なのかな。 …そうじゃなくても親友なのは確か。
そんな空気漂う素敵な2人だったな。