第27章 アップルパイ
・
・
・
『あ、クロさんおはよう!』
家を出るとクロがちょっと前を歩いていて、
穂波は駆け寄って挨拶する
「おぉー穂波ちゃん、おはよう。なんか新鮮だな」
『…ね!わたしもう朝からにやけちゃって』
「おぉ、なんか2人とも幸せそうに顔がにやけてんな」
「…は? なんで2人ともなわけ」
「いやそれは、ふたりともだからですけども」
「…にやけてないし」
「いや、にやけてんぞ。なんなら穂波ちゃんよりにやけてんぞ」
「は?そんなわけないし。何それ意味わかんない」
「にやけてる」
「にやけてない」
「にやにやしてる」
「してない」
『…ねぇ、クロさん』
「んー?」
『最近夢みたぁ?』
「…笑」
「夢かぁ… 記憶にねぇな」
おれとクロのやりとりをどこか間抜けに穂波が遮る
『…そっか』
「え、終わり? 穂波ちゃんは昨日夢見たの?」
『…それが、見てないんだけども』
「…笑」
「何それ 笑 あぁ、じゃあ今まで見た夢で覚えてんのある?インパクト強いやつ」
『あ、それならいくつかあるよ』
「それくださーい 聞かせてちょ」
『んーとね、じゃあ高校入学前の春休みに見た夢なんだけどね…』
バリのコテージに連泊していた時にみた夢を話し出したんだけど…
「ちょっと待って穂波ちゃん、それって普通に心霊現象じゃないの?」
「…おれも思った」
『え、そうなの?でも、怖くはなかったけど』
「俺は怖いわ。 怖いこと、悪いことが起きてなくてもなんか怖い」
『そっか… ごめん』
「いやそういう意味じゃなくって、俺だったらっつー意味」
『でも、なんか土地と繋がったっていうか、そういう感じしてとてもよかったよ』
「………」