第27章 アップルパイ
ー研磨sideー
「…なんだか、お嫁さんが家にいるみたいだなぁ」
目が覚めると隣に穂波はいなくて
部屋着を着てそのままダイニングにいったら。
穂波にコーヒーのはいったカップを差し出された父さんが
そんなことを呟いたタイミングだった。
「…ちょっと、父さん」
「あ あぁ、研磨。おはよう。 あはは、研磨に凄まれたのいつぶりだろうか」
父さんは少し気まずそうにしながらも呑気にそんなことをいう。
そりゃ穂波もそういうこと自分で言ってくれたりもするし
おれも正直ふわふわとそういうこと考えるし、ちょっと話したりもした。
…けど親がそれを言うのはちょっと。圧すごいでしょ。
加えておれみたいなコミュ力ないやつの親に言われたらさ。
まぁ、穂波はそんなこときっと微塵も思ってないんだろうけど、
でもなんか…
「私もさぁ、今朝、お嫁どころか孫娘のことまで話しちゃって」
「………」
母さん、あっけらかんとそんなことを言うけども。
孫娘って… ちょっと
「…顔洗ってくる」
突っ込みどころがありすぎて濃すぎて…何もいう気起きない
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ダイニングに戻ると普通に父さんはご飯食べてて…
母さんも穂波に促されて食べ始めるところだった。
『研磨くん、おはよう』
「…ん、おはよう穂波」
『トースト、焼き始めてもいい?もう食べれる?』
「うん、お願い。 …ちょっと、2人ともにやにやこっち見ないで」
母さんと父さんの惚気具合が半端ない
なんなのこの人たち。
穂波は割と普通だ。
穂波ん家にいるときとそんな変わんない。
やっぱ穂波は台所にいる時が一番、落ち着いてるなぁと思う。
2人分のプレートが用意できて、並んで座って食べ始めるわけだけど…
終始前の2人はにやにやしてて気持ち悪い。
いつものように父さんが先に食べおわって、さっと支度をして家を出て。
それからおれと穂波も片付けて準備して朝練に行く。
朝練がある日は基本母さんが最後に家をでる。
いつも通りのなかに、普通に穂波がいて、
これってけっこうじわじわくる。