第27章 アップルパイ
・
・
・
部活を終えてクロと電車に乗って帰る。
いつもの車両、いつものドアのとこ。
〇〇駅で穂波が乗ってきて、号流する。
この感じ久しぶり。
『クロさん、研磨くん、お疲れさま』
「おー、穂波ちゃん。今日も私服かわいいね」
『あはは、ありがとう、鉄くん♡』
「こら、普通に褒めてんのになんでも冗談みたいに流さないでくださーい」
「…ふ 笑」
穂波は黄色と黒の花柄のVネックのワンピースを着てる。
長めの丈で、前ボタンでシャツワンピースっていうのかな。
上からアイボリーのざっくりしたカーディガン、黒いゴアブーツ。
…うん、冗談じゃなくってかわいい。
座ってるおれとクロの前に立ったまま。
座るか聞いたけど、二駅だし立ってるって。
家まで3人で歩いて、家の前でクロも呼ばれてるって聞かされてちょっと予想外だったけど、
まぁ、別にクロがうちの食卓にいるのは普通なことだし。
でも日曜に、今日の昼に、今から。
3回も祝われるって不思議な感じでどこか他人事な感じ。
親に祝われるより、穂波に祝われるのが本番って感じがして、
正直、日曜に誕生日は終わっているような感じがある。
…おれってまだまだ子どもなんだな、とか思う。
いや大人になっても親に祝われるのにありがとうとか思えるかわかんないけど。
穂波なら誕生日に、親に感謝の気持ちを逆に伝えるんだろうなとか。
ていうか、実際穂波は言ってた、2月の誕生日のとき。
感謝のの気持ちがないわけじゃないけど、言えないおれはちょっと子供っぽいと思う。
かと言って、言えるようになりたいわけではないんだけど。
穂波は母さんの手伝いをしてて、
リビングでゲームしてるとクロがやってきて、
クロは父さんと話してた。
5人でいつもの誕生日のご飯食べて、
母さんのアップルパイ食べて。
アップルパイに添えられたバニラアイスは近所のアイス屋のだった。
穂波の家で食べたのはアイスも作ったって言ってたな…
どっちも美味しい。
今年の誕生日はおれの好きなアップルパイが2種類できた。
穂波のと、母さんのと。