第27章 アップルパイ
ー研磨sideー
誕生日おめでとうだって。
そういえば、去年のおれの誕生日からもう恒例になってるこれ。
穂波がいつも嬉しそうにみんなと相談してるのはずっと見てきたけど、
今年もおれにも、とか全く考えてなかった。
…だからなんか穂波、妙によそよそしくなってたのか。
そろそろみんなが来るってわかってたから。 …隠すの下手だな。 かわいい。
福永がおれの前にしゃがんで、蝋燭の刺さったゼリーを差し出す。
ふーって消して、なんかわーってみんなが言って、
それから福永が取り分けるためにさーっと後ろの方に戻っていく。
穂波もそっちに行こうと立ち上がろうとしたので、
手首を掴んで引き止める。
「穂波、ありがと」
『…ふふ。 研磨くんに求められたら拒めなくてごめんね』
「………」
なるほど確かに、拒むとこだったのか。
拒まれてたら、おれどうしてたんだろ。
拒まれたことないから、だいぶ未知だ。
それからみんなでゼリーを食べた。
さっぱりしてるし、さっと食べれるしゼリーいいな。
前、熱出した時からおれの中でゼリーが結構きてる。
花が入ってるゼリーなんて初めて食べた。
花の味は特にわかんなくて、普通に食べれた。
つるんと食べれるから、
食べ終えたあとも時間が余って、
みんなは話したり、飛び跳ねたり、
まぁいつも通りいろいろ賑やかにしてた。
穂波はゲームをするおれのよこで、
にこにこしながらみんなを眺めてた。
…かわいいんだよな、いちいち。いちいち。
そろそろ掃除の鐘がなるかな。
「ねぇ、穂波」
『…ん?』
「さっきの続き、家でしようね」
『………ん』
あからさまに恥ずかしそうになって、でも、頷いた。
あーあ、かーわい。
今日は穂波、おれん家に泊まってく。
明日は、おれと一緒に朝練の時間に合わせて家を出るって。
…なんかよくわかんないけど。
よくわかんないけど、それだけのことが嬉しいんだよな。