第5章 夏
ー研磨sideー
穂波の家に向かっているとき
何色のパスタがいいかと聞かれて
ソースのことかなと思って赤か透明って答えたら
赤で透明なパスタを作ってくれた。
ベーコンとトマトとバジルだけのシンプルなパスタはとても美味しかった。
「…この粒々はなに?」
『キヌアって雑穀だよ。プチプチしてるの』
「ほんとだ、プチプチしてる」
サラダもさっぱりしてて美味しかった。
『あっ、研磨くん。足りそう?お肉とか足りなくない?』
「…ん、大丈夫。午後休みだったし、これぐらいで良い」
『ん。何でも言ってね』
こういうとき、
何度も確認してこないでおれが言ったことを一旦受け止めてくれる感じが、すごく心地いい。
答えてるのに何度も確認されるのは苦手。
一緒に洗い物をして、
ソファに座って母親にメールする。
【ちょっと遅くなる】
これでクロにまた電話が行くことはない…かな。
『ねぇ、研磨くん。今日、今までで一番ずっと一緒にいるね』
お茶を持ってきて隣に座りながら穂波が言う。
21:00
13時前に駅で会ったから…
「ほんとだ」
『…今日、誘ってくれてありがとうネ』
「…ん。お茶、ありがとう。いただくね…」
お茶頂いたら帰るね、と言いたいんだけど、言えない。
まだ帰りたくないのに、言えない。
「ねぇ、穂波。ここにきて?」
脚をとんとん、と叩きながら呼ぶ。
『…ん。(…ずるい)』
穂波はすこし恥ずかしそうに俺に跨り、肩に腕を乗せる。
おれはその表情を、瞳をじっと見つめる。
『…なぁに?研磨くん?』
顎に手をかけ、穂波の唇を親指でなぞる。
顔を傾けると穂波の唇が吸い寄せられるように
おれの唇に触れる。
吸い付くような長いキスを一度。
『……ハァ…』
穂波の吐息が頬にかかる。
Vネックの襟元から覗いている鎖骨に唇を這わせる。
唇だけじゃなくて鼻先や眉間それから舌を這わせて、服で隠れていない穂波の肌を感じる。
首筋、鎖骨、肩…
データをとるように、ゆっくり、ゆっくりと…
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