第27章 アップルパイ
ー穂波sideー
お弁当を食べ終えて、あったかいお茶を飲んで、
研磨くんは膝をとんとんってしながら来てっていう。
…行く 行きたい 行きたいんだけども、
もうすぐバレー部のみんながお祝いに来てくれる時間なはずで。
今日の夜も研磨くんの家でお祝いだし、
ケーキのクグロフ型でゼリーを作った。
さっぱりしてるし、寒天で固めれば冷蔵庫に入れとかなくても平気。
保冷バッグに保冷剤をいれて、廊下にある福永くんのロッカーに置いてきた。
お皿とか、飾りに使うものも入れておいて、デコレーションは福永くんのセンスに全てお任せ。
ゼリーは白葡萄のジュースを使ったゼリーにした。
だから、薄く黄味がかったゼリー。
そこに、ぶどうとマスカットとあと青紫色の小さな食用花を入れた。
エディブルフラワーって男の子興味ないどころか嫌がるかなと思いながら、
でもスイートアリッサムならクセがないし、小さいし…なんて考えて入れてしまった。
きっと大丈夫。
「穂波? おいでよ」
『………』
なにか他の話をしよう。
『研磨くん、そういえばあれから朔さんと会った? …その、オンラインゲームで』
「………」
研磨くんは手をついて、すすす…とわたしの方へ四つ足で近づいてくる
「穂波、変なの。 来ないし。クロの話逸らすのは上手なのに、今のすごい下手だし」
すぐそばに研磨くんの顔がある。
じーっと目を見られる。目の奥を覗かれている感じ。
すでにすごく近いのに、じりじりと距離が縮まって、
そのままゆっくりと押し倒される。
研磨くんはわたしに跨った状態で膝をつき、
わたしの顔の両脇に手をつく。
「…なんか、そういうのって。 襲いたくなる」
『 ! 』
顔がどんどん近づいてきて唇が重なる
一度、口付けてしまうと研磨くんだもん、
わたしも止まらなくなってしまう。
ただみんなが来てしまうっていうのが引っかかていただけだし…
そのただ一つの引っかかりも 瞬時にどこか遠くの方へ飛んでいってしまった