第27章 アップルパイ
ー研磨sideー
10月16日(火)
屋上で弁当を食べる。
今日は穂波が作ってくれるって母さんに今朝聞かされた。
穂波は帆布のトートバッグを持ってて
多分そこに2人分入ってるんだろうと思う。
『はい、研磨くん。お誕生日おめでとう』
普通にいつもの弁当袋が出てくるかと思ったら
小さな帆布の鞄を渡された。弁当よりちょっと大きいくらいのやつ。
水筒も脇に一緒に入るような。
「あれ、もしかしてこれ穂波作った?」
『えへへ、作ってみた』
「穂波裁縫できるの?知らなかった」
『いや、できるとは言い難いけど、なんとか。細かいところはみないでね』
「帆布とか、分厚くて難しそうだね」
『…ふふ、着眼点がさすがです。ちょっと苦戦したけど、意外と形になってるでしょ?』
生成りの帆布に黒い持ち手。
中には黒のリネン地の弁当包みに包まれた弁当が入ってる。同じ生地の箸袋も。
「わ、え、これも全部つくったの?」
『研磨くん〜〜〜 そんな、反応してくれてありがとう。嬉しい。ささ、食べてね』
穂波はすごくかわいい顔をしながら食べるように促すけど
食べ物以外の手作りって多分初めてで…
ていうか、なんかいろいろ予想外で食べる方になかなか進めない。
「わ。 なにこれどういうこと?」
一昨日の展示会で見た、
種でできたアクセサリーのパーツが箸袋の紐にくっついてる。
『ふふ。ピアスの部分を外してパーツにしたの。
でね、お洗濯の時は外せるように小さいフックをつけた。取り外し可能。
これもわたしが洗うからいいかなぁって』
「…やば すごい嬉しい。 …ありがと」
『うん。よかった。 …じゃあ、食べよっか。お昼休みの間に』
「あ、そうだね。食べる」
弁当屋で選んでくれた二段のわっぱ。
下の段に大根菜とじゃこのご飯、
上の段にはおかず。
いんげんの肉巻き、卵焼き、人参と厚揚げの煮しめ、春菊の胡麻和え、
さつまいものレモン煮、酢蓮根。
量もちょうど良くて、いい感じの満たされ具合。
「穂波、ごちそうさま。 …ちょっと、こっち来て?」