第27章 アップルパイ
『でね、研磨くんの制服勝手に持ってきちゃったって』
「え」
『研磨くんのお母さんと話してそうしたって。 …勝手にごめんね。
あっ、でも帰るならわたし持ってくの手伝うし…』
「いや、帰らないけど」
『ほんとう?嬉しい!』
「おれも、嬉しい」
『朝まで一緒にいられるね』
「…ん」
…やった。なにこれ。ラッキー
ていうか取りに行かなくてよかった。
『ケーキ、用意するね』
そう言って穂波は台所へと戻る。
少しすると、電気消してもいい?と聞かれた。
…そっか、ああいうのするのか。
ちょっと、想定外だけど。ま、穂波だし。
穂波は電気を消して、蝋燭の刺さったケーキを持ってきた。
『研磨くん、もうすぐ17歳になるね。おめでとう』
「…ん」
「………』
「………」
『…ふーってしてね』
「あ、うん」
ふーってしたら、穂波はぱちぱちと小さく手を叩いて
それから電気をつけた。
綺麗なアップルパイ。
飾りは葉っぱと蝋燭といつもの金色のケーキトッパーだけ。
むりやり飾りつけてないのがいい。
だってアップルパイだし。
オーブンで少し温め直して、
サクサクのあったかいのにバニラアイスを添えて食べる。
「…うま」
おれの誕生日の頃のアップルパイが一番美味しいと思う。
りんごがすっぱいし、柔らかすぎない。
『チャイも合うねぇ』
「うん、チャイ合うね」
『研磨くん、お弁当箱ね、お誕生日当日に渡すね』
「あぁ、うん。穂波のいいように」
『うん』
「ていうか、穂波。昼の弁当も夕飯もアップルパイもありがとう。
すごいおいしかった。パイ、うますぎ」
『…ふふ。よかったぁ。こちらこそ、一緒に過ごしてくれてありがとう』
「…ん」
それからまたあったかいお茶を飲んで、
お腹が落ち着いたところで風呂に入ることにした。