第27章 アップルパイ
ー研磨sideー
『すぐできるようにしてあるの。だから、ラクにしててね』
そう言って、穂波は台所に入っていく。
ソファでいつものようにゲームをするんだけど、いつものやつ。
泊まっていきたい。ってなる。
でも制服ないし。 …穂波の自転車で取りに行こうかな。
いやでも、いつもいつも泊まりすぎだよな…
え、でも最後泊まったのって1ヶ月前か…
今日逃したら、多分しばらく機会ない気がするし。
あ、でも誕生日の当日、母さんに呼ばれてうちに来るって言ってたな
火曜だから2つレッスンがある日だけど、休むって言ってた。
そんなにまでして優先されて、それを聞いた時少し、照れ臭くなった。
火曜、泊まってけるかな。
母さんに聞いとこ。
『お待たせー』
呼ばれて行くと美味しそうなのが並んでる。
そういえば誕生日にご飯作ってもらうのは初めてだ。
ラザニア、木の子のスープ、ルッコラとりんごのサラダ、
ナスのオイル蒸し、太刀魚とオリーブのマリネ、バゲット
その他に、花が生けられた花瓶と
あと、シャンパンみたいなのの瓶とシャンパングラスが置いてある。
『アップルタイザーで乾杯しよう』
「アップルタイザー?」
穂波がビンの包みを開けてコルクを覆ってるやつの針金をねじる。
『りんごジュースだけで作ったりんごの炭酸ジュースだよ』
「…へぇ、うまそ」
『………』
「…炭酸、か」
『研磨くん、ダメだよ』
「…あ、うん」
炭酸でむせたことを思い出して、
それからそのままミイラごっこの件を思い出すとこだった。
いやもう、思い出してるんだけど、なんとか吹き出すとこまではいかずに済んだ。
それから無事に乾杯して、
穂波が作ってくれたご飯を食べる。
いつものことだけど、どれもこれもおいしい。