第27章 アップルパイ
ー研磨sideー
穂波が行きたいという展示会にやってきた。
3人の人でやってる展示会らしい。
各々の作品を展示販売してるんだけど、その共通項は南米。
日本人だけど旅なのかなんなのか南米に滞在しながら
制作活動をしている人たちらしい。
一人は葛の繊維で編んだ鞄とか、手紡ぎの糸で織ったストールとか。
もう一人の人は革でてろんとしたブーツとか小物を作ってる人だった。
ちょっとファンタジーっぽい。冒険に出る前の初期装備っぽい。
少しわくわくした。
…で、もう一人は女性で。
この人のが、すごい。
南米のどこでかは知らないけど
採取した木の実、いわば種をシルバーや麻の紐をつかってアクセサリーにしてる。
石じゃない、天然石とかって言われるやつじゃなくって、植物の種。
べつにデザイン自体はシンプルなものなんだけど、パワフルで、
すごい、アイテムっぽさがあって、特にわくわくした。
着けたいとか、穂波につけて欲しいって感じではないんだけど。
ギャラリーという場所に来たのは2回目。
でも前は作家の所有してるとこで
こんな風な貸しスペースとしてのギャラリーは初めて来た。
展示販売なんて、初めて。
じっくりとみて、ギャラリーをあとにする。
穂波は海外の友達にって種を使ったピアスを買ってた。
「…おもしろかった。ちょっと異世界感」
『ね、かっこよかったし、ファンタジー感あったね。よかった。研磨くんが楽しめて』
「…ん」
『ほんとはここで何か見繕えたらなぁなんて思ってたのだけど
研磨くんのビジュアルには似合っても、研磨くんの性質に合わないような気がして。
想像しきれなかった』
「おれの性質…」
『似合うからって身につけれるわけじゃないでしょ、
わたしと研磨くんはそういうとこも似てるのかなって』
「あぁ、うん。そうかもね」
おれも穂波にネックレス選ぶ時それは思った。
似合うか似合わないかで選んでたら、色も形もいろいろ似合いそうで。
でも着けるか着けないか、っていうかライフスタイルとかそういうのに合ってるかって考えると
絞られてきて… 選びやすいのか選びにくいのかは微妙なとこだけど、
しっくりくる。ピンとくる、ってものにたどり着けた気がする。