第27章 アップルパイ
「あ、別に嫌だって意味じゃない。言葉のままの意味」
『…ダブルメジャーができるのと、
やっぱりさまざまな文化、ルーツの人たちと日常的に関われるのは魅力的。
日本も大好きだし、日本人だけでもみんなそれぞれ個性があって楽しいけど…
研磨くんと離れるのは寂しいけど、でもそれでも行きたいなぁって思ってる。
まだわかんないけど、さ』
「…ん。ダブルメジャー?ふたつ専攻とるってこと?」
『うん、そう。ほんとにダブルで行くかはわかんないけどね』
「ハワイ?」
『ううん、多分カリフォルニアかなぁ…オーストラリアとかも惹かれるけど』
「…へぇ。 あ、アキくんか」
『うん、お家もあるし、海もあるし、好きなカルチャーが盛んだし…』
「いいんじゃない、穂波と日常的に会えないのとか想像できないけど。
でも自分たちのやることやってたらあっという間なんだろうな、とか思うし」
『…うん。 想像しただけで寂しくなって暴れ出しそうになるけど』
「え」
『でも同時にわくわくも渦巻いてて、大丈夫な気がしてくる』
「…ん」
『まだ先のことだし、って思ってたけど…
ぎりぎりで言うより、決まってるなら話せばいいんだね。まぁ、場合によるんだろうけど』
「多分おれも穂波もさ、相談とかするタイプじゃないし…
自分で考えて決めたことはなかなか変えないと思うんだよね」
『…ん』
「だから、なんだろ。ぶつかる時はぶつかるかもしれないし、…んー」
『………』
「話せることはおれも、話していこうかな、とか思った」
『…ん』
「あんまりふわふわしたことは話せないけど」
『………』
「憶測じゃなくて、決定事項を知らせてもらえると組み立てやすいとこもあるし」
『組み立てる』
「想像しやすいじゃん。4年間?は穂波とは暮らせないのか、じゃあその間に…、とか」
『………』
「穂波と一緒に暮らせるのかな、
でも海外の大学行くのかな、って考えるよりずっと地に足がつく感じがする」
『なる…ほど…』
そっか… こんな風にわたしのことをこれからに組み込んでくれてるひとが、
わたしにはもういるんだもんな。わたしの一方通行じゃなくて。
しみじみとそんなことを再確認したような感じ。
話せることは、これからも話してみよう。